無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

アンフィニッシュト・モンキー・ビジネス

愛羅武勇

愛羅武勇

 昨年の東京ドーム公演前後の氣志團は正直、どこか迷っているように見えた。どういう形かは置いといても、やはり綾小路翔は昨年のドームを区切りにしようという気持ちがあったんじゃないかと思う。ところがそうは行かなかった。区切ろうにも区切れなくなってしまった。氣志團という存在を誰よりも客観視し、俯瞰していた綾小路翔にとって、ここまで自分の描いたストーリーから外れてしまったことはおそらく無かったんじゃないかと思う。
 昨年のシングル「結婚闘魂行進曲「マブダチ」(CCCD)」「族 (CCCD)」が正直、音楽的には突き抜け切れていなかったのに対し、今年に入ってからの「夢見る頃を過ぎても」「俺達には土曜日しかない」そして今作のリードシングル「You & Me Song」はどれもこれぞ氣志團というべき、甘酸っぱさと切羽詰まった感に溢れた充実作だった。今は綾小路翔を含め、メンバーが氣志團という存在に自ら飛び込み、翻弄されているような気がする。手綱を握るのではなく、その波に飲み込まれようとしているのではないかと。その結果、こういうストレートに氣志團に求められているような曲群が生まれたのではないだろうか。「俺達には土曜日しかない」なんて、タイトルだけで完成してしまっている。本当に素晴らしい。本作は個人的にデビュー作に次ぐ位のアルバム。コンパクトにまとめよう、という気が全く感じられない過剰さがいい。本人たちもどこに着地しようとしているのかわからない(と、僕には思える)今の氣志團は非常にスリリングだ。