無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

天の道を行き総てを司るバンド。

Shine on

Shine on

 「アー・ユー・ゴナ・ビー・マイ・ガール」はiPodのCM曲というよりも、今ではダイノジのおおちがエアギター世界チャンピオンになったときの曲、と言ったほうが通りがいいかもしれない。そんなジェットの2作目。
 AC/DCばりのギターリフがフィーチャーされたロックンロールナンバーももちろん最高なのだけど、このバンドの味はバラードがきっちりと大きなスケールで鳴らせるところなんじゃないかと思う。泣きのメロディーと、ベタベタに盛り上がるアレンジ。小手先のセンスの良さではなく、王道で正面突破を狙うストレートさが、逆に今の時代には新鮮に思える。今作でのバラードナンバーの代表はアルバムの中心に位置するタイトル曲「シャイン・オン」だが、これはセスター兄弟の死んだ父親のことがテーマになっているらしい。人生に起きた悲しい出来事や、2作目へのプレッシャーなど、様々なものを乗り越えてこのスケールの大きな曲を手にしたことは、彼らの自信になると同時に、ロックとしての厚みを増すことになる。自分たちの人生のドラマを音楽に反映することは、ロックに限らずミュージシャンにとっては必要なことだと思うのだけど、人間としての成長と、バンドとしての成長がリンクすると、相乗効果によって「大化け」することが往々にしてあるわけだ。彼らの場合、元々それなりのスケール感を持って登場してきただけに、そこまでの大化け感は無いけれども、確実に前作からの進化を感じさせる。フィル・スペクタービートルズの匂いもそこかしこに感じられるし、デビュー作『ゲット・ボーン』で見せた70年代王道のギターロックをさらに大きく展開した、堂々のセカンドと言えるだろう。来年の来日では武道館公演もあるらしいけど、確かにこういう音にはでっかいアリーナが似合うと思う。