無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

地平線の向こうへ。

レミオロメン Tour 2006 “ISLAND OVER THE HORIZON”
■2006/12/15@横浜アリーナ

 会場に集まっていた観客のほとんどは10代から20代前半だと思われる。あとはそのやや上のOLさんかと思われる方々。少なくとも僕のように独りで来ている30半ばの男など少数派であることは間違いない。僕が初めて彼らのライヴを見たのは『朝顔』発表直後の札幌のライブハウスだったが、その時は男女半々かやや女性が多いくらいだったと思う。そしてこの日の横浜アリーナは全席椅子つき仕様になっていた。開演してしまえば関係なくなるのだけど、見方を変えればオールスタンディングに慣れていない客が多いだろうことを考慮したと思えなくもない。要は何が言いたいかというと、「粉雪」という曲によって一気にファン層が広がり、ロックなどにあまり触れることのない人々も彼らのライブに足を運ぶようになったということだ。この日、僕が会場を見渡してまず感じたあずましくない感じというのはつまりはそういうことなのだと思う。(北海道弁を使ってしまって申し訳ないですが、その場にいづらいような違和感を感じたということです)
 同じような違和感というのは、実はレミオロメンというバンド自体が、「粉雪」とその後の狂騒の最中で既に感じていたことなのかもしれないと思う。先に発表されたライブ盤に収められた新曲「アイランド」は、自分たちの立ち位置を見失いかけていた藤巻亮太の葛藤がかなりストレートに反映された曲だと思うからだ。しかし、そういう曲を表に出したこと、その曲が本編のラストに置かれ、しかもそれが感動的なクライマックスになっていたことにより、僕はもう彼らがそんな悩みをとうに乗り越えた地点にいるのだと感じた。藤巻亮太の顔は、遠目だったが非常に精悍に見えた。迷いのない、一人の大人の男としてそこに立っているような気がしたのだ。バンドの演奏は(バンド3人+サポートキーボード1人というシンプルな構成ながら)横浜アリーナという場所の大きさを感じさせないほどのスケールを誇っていたし、『HORIZON』からの曲はまさにこの空間にうってつけと言える深さと広がりを持っていたことを改めて証明して見せた。その中で、「ビールとプリン」のような些細な日常を描いた初期の曲を聞くと、懐かしいと同時に、この数年で彼らが成長した飛距離の大きさを感じずにはいられないのだった。スクリーンを効果的に使った演出も功を奏し、スタジアムバンドとしての風格すら感じさせる堂々のライヴだった。ラストのスタンドバイミーは当然のように最大の盛り上がりを見せ、ドラムの神宮寺は相変わらず最後まで最前列の客にタオルやら何やらいろいろ投げたりしてサービスを怠らない。新しいファンは当然満足しただろうし、そうでないファンも彼らのいる場所とその決意をしっかりと受け取ることのできた夜だった。
 J-POPという言葉の中で消費(浪費)されていくバンドがいかに自分たちのルールの中でロックバンドとしてのアイデンティティを保つのか。レミオロメンの辿っている軌跡は、その最新のモデルケースだと言えるだろう。

■Set List
1.永遠と一瞬
2.五月雨
3.モラトリアム
4.1-2 Love Forever
5.蒼の世界
6.傘クラゲ
7.電話
8.ビールとプリン
9.シフト
10.プログラム
11.Monster
12.太陽の下
13.明日に架かる橋
14.雨上がり
15.南風
16.粉雪
17.アイランド
<アンコール>
18.3月9日
19.流星
20.紙ふぶき
21.スタンドバイミー