無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

生まれた瞬間からスタンダード。

Traffic & Weather

Traffic & Weather

 昨年、アジカン横浜アリーナ公演にゲストで登場した際にも既にアナウンスされていた4年ぶりの新作(4作目)。なにせファウンテインズのアルバムである。聞く前から名曲がぎっちりと詰まった傑作であることは保証されているのだけど、実際その期待を裏切らない作品だと思う。
 前作からの流れで言うと、更にバンドアンサンブルがタイトになり、パワーポップ的な色合いが強くなっている。しかし曲調はやはり様々であり、古今東西のいろいろなポップスの要素を濃縮したソングライターの技が冴えている。大半の曲をアダム・シュレシンジャーが書いており、彼の個性が色濃く出た作品になっている。なるべくならアダムとクリスという2人のソングライターの丁々発止のやりとりが見たいのだけど、今はそうはなっていないようだ(引きこもりがちなクリスのモチベーションの問題だと思うが)。しかしその分、アダムという人のソングライターとしての能力が十二分に発揮されている。どこにでもある風景や、その辺にいそうな市井の人々のストーリーを描くと言う手法は変わらずだが、その中に普遍的な感情や希望やメッセージをさりげなく盛り込んでいる。なんてことのないラブソングの中に洗練された都会的なセンスがきらりと光っている。
 一聴して耳を惹きつけるメロディー、そして聞き込むほどに味のある歌詞のストーリーとアレンジの妙。まさにポップスの見本だと思う。個人的には、2人がベストカップルであることを「交通情報と天気予報」に例えた表題曲や、空港で荷物が出てこないというだけの物語の中に夫婦の強い絆を歌った「マイケル・アンド・へザー〜」のような曲にぐっと来る。