無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

自由なる混沌。

Venometeoric

Venometeoric

 前作から約1年半ぶりの4作目。早!というのが正直な感想。バンド史上最短のインターバルでリリースされた本作はその通りスピード感に満ちた内容になった。
 彼らがデビューした90年代末にはいわゆるミクスチャーと呼ばれるバンドが有象無象出てきていたが、その多くは結局ヘヴィーなロックサウンド+ラップという足し算から抜け出せずに消えていった。本来、自由であるはずの「ミクスチャー」という概念の中で、逆に決まった枠にとらわれてしまっていたのだ。BDBが今でもそのオリジナリティーを失わずに生き残っているのは、「自由」という意味をきちんと理解してそれを音として形にしてきたからだと思う。
 前作よりも日本語詞の割合が増えたが、その多くはやはり彼らの追及するサウンドの概念やビジョンを様々な角度からイメージさせるようなもので、この点で大きな進歩がなかったのはちょっと残念。もうひとつ、サウンドの力強さとスピード感にまぎれてメロディーの引き出しが少し少ない感じがするのがやや物足りない。白川の歌うメロディーが個人的にはすごく好きなので、もっとフィーチャーして欲しいんだけれども。ツインボーカルの棲み分けは若干曖昧になり、小島も白川もどちらもラップ的だったりフレーズを歌ったりする。が、小島が日本語で白川が英語という大きな区分けはあるようだ。しかしそれも次のアルバムでは曖昧になるのかもしれない。
 エンジニアはバトルズなどを手がけたKEITH SOUZAが担当しており、海外のスタジオでかなり短期間に集中してレコーディングされたようだ。これまでは何年もかけてじっくりとサウンドを練り込むような形だったと思うのだけど、今回は時間的な制約を設けたこともあって全体にかなりざっくりとした音になっている。特に前半はテンションが高く、バンドが一体になった疾走感で一気に聞かせてしまう。複数の曲が無理矢理1曲にまとめられたような展開も多く、その歪さがサウンドのカオスと共に大きな魅力であるのは変わらない。彼らが本作の音に対して妥協した、とは決して思わないのだけど、本来ならもっと緻密にやろうとするはずの部分をあえてラフに出したという印象は確かにある。彼らが今こういうやり方を試行したことは興味深い。ある意味、『MICROMAXIMUM』の呪縛から解かれたということなのかもしれない。