無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

80年代J-POPの徒花。

3rd BREAK(紙ジャケット仕様)

3rd BREAK(紙ジャケット仕様)

 今年のライジングサン(祝・10回目!)のアーティスト発表もほぼ出つくしたようだけど、個人的な目玉の一つはバービーボーイズ。一昨年の米米や昨年のレピッシュフライングキッズなど、最近のバンド再結成ブーム(?)で往年の名バンドが出演することも多いが、今年はバービーにジュンスカが30代以上のロックファンを感涙せしめるのでしょう。(あと、元スライダーズのHARRYも来るし)
 バービーは個人的に、中学高校の時期に最も好きだったバンドのひとつ。その中でも最も好きなアルバムはこの3枚目。彼らの曲のほとんどは男女の関係を歌ったもので、しかも別れる寸前の痴話喧嘩ソングが多かった。それを男女のツインボーカルでデュエットするのだから、これはもうほとんど「三年目の浮気」の世界。歌謡曲である。これをロックンロールにしてしまうというのはある意味ひとつの発明だったと言える。彼らの曲の中には「愛してる」とか「好きだ」という直接的な表現はほとんどなかったと思うのだけど、そういったストイックな部分や、杏子さんのセクシーなイメージも含めて、すごく大人のバンドという印象が残っている。2ndの「負けるもんか」や、本作収録の「なんだったんだ?7days」のように、どこか男の方が女より立場が下という曲も多く、また、コンタの方が杏子さんよりハイパートを歌うことも多かったので、クールな中にもどことなく男の情けなさのようなモノが見えて、ビシッと決めてるだけじゃないユーモラスな感じを僕は彼らに感じていたりした。すごく魅力的で、カッコいいバンドだった。
 文字通りこの3作目でブレイクを果たし、次作『LISTEN!』が音楽的にもセールスでもピークだったと思う。が、それ以降のバービーのサウンドはどこか行き詰まり感が拭えず無理な感じがして、僕としてはこのシンプルでストレートな3作目が一番好きなのである。彼らの音は、ギターのいまみちともたかの意向で絶対にピアノ以外の鍵盤楽器を入れないという信念のもとに鳴らされていた。ギターバンドとしての職人的な頑固なプライドがあったのである。しかし、そのプライドが皮肉にもアルバムを重ねるにつれサウンドの広がりの可能性を妨げ、音楽的な行き詰まりにつながって行ってしまったように思う。高校の時に1度だけ札幌で彼らの全盛期のライブを見たことがあるのだけど、今考えると、ほんとに行ってて良かったと思う。
 当時の人気バンドは、レベッカにしても米米にしても再結成したり、再評価の機運が高まったりしたことがあるが、バービーについてはそういったこともあまり無いように思う。2003年にEPICソニー25周年記念イベントでライヴを行ったくらいだと思う。個人的には最近の若いロックファンにも聞いてもらいたいし、もっと評価されていいバンドだと思う。彼らが過小評価されているように感じるのは、サウンドの中心であったいまみちともたか氏がバービー解散以降表立ってシーンの中心で活躍することが無かったことも原因かもしれない。今年に入って「SMAP×SMAP」に出演したり、フェスに参加したりしているが、これを機にもう一度多くの人が彼らの音楽に触れることを切に願う。