Utada、卍解。
- アーティスト: Utada
- 出版社/メーカー: ユニバーサルミュージック
- 発売日: 2009/03/14
- メディア: CD
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自分にかかる負担が減ったからなのか、ここでの宇多田ヒカルは非常にリラックスしている。日本語よりも英語の方が彼女の素の感情があらわになるという意味では前作も同様だったが、歌詞の明快さは比較にならないほどだ。サウンドが他人の手によるものである分、曲そのものや歌唱においては自分自身の色を前に出さないと拮抗できないということもあったのだろうか。これほど「宇多田ヒカル」という人の姿がはっきり見えるアルバムは正直、「宇多田ヒカル」名義のものにはなかったと思う。
そんなことはないだろう、今までだって宇多田ヒカルは曲の中で自分のことを歌ってきたじゃないかという意見もあるだろうが、彼女の曲の中にあるストーリーや一人称は聞いた人間全てが自分自身のものとして投影できる種類のものであって、彼女自身のものではないのだ。それはつまりポップであるということであり、だからこそあれだけのセールスを記録できたのだと思う。しかしここにきて英語ではあるが彼女はきっちりと自分のことを歌い始めている。僕自身は未読だが最近出版した自伝でもかなり赤裸々に深いところまで書いているらしい。結婚と離婚を経て、彼女の中で何か大きな変化があったのだろうか。できるならば英語ではなく、次は日本語で自分自身のことを歌ってもらいたい。しかし問題は、日本で彼女の満足するサウンドを作れるトラックメイカーがいるか、ということになるのかもしれない。