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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

50にして天命を知る。

YEARS OF REFUSAL

YEARS OF REFUSAL

 『リングリーダー・オブ・ザ・トーメンターズ』以来約3年ぶりとなるモリッシー9枚目のオリジナル・アルバム。5月で50歳となった御大に対して、しかもあのモリッシーに対して使うべき言葉ではないかもしれないが、非常に清々しい快作となっている。アルバム完成後に亡くなってしまった故ジェリー・フィンによるシンプルでソリッドなサウンドもその大きな要因だが、このアルバムをキレのいいものにしているのは何よりもモリッシーの書く歌詞そのものである。
 1曲目からいきなり「そろそろまともな人間になってもいいんじゃないか」という周りの声に対して「その気持ちはありがたいが、さっさと死んでくれ」とのたまう。最終曲では「ほっといてくれ」という悲痛な叫びを繰り返す。本作でのモリッシーはこれまで以上にはっきりと他者に対する怒りとNOと表明している。削ぎ落とされたロックサウンドはそのガソリンとして有効に機能している。その一方で「誰ひとりぼくの愛を望んでいない」と、孤独をかみしめていたりもする。しかし、その孤独をもたらしているのは他ならぬモリッシー自身なのだ。そして、さらにタチの悪いことにモリッシーはその孤独を楽しんでいるようにも見えるのだ。
 自分を受け入れない他者と、その集合体である社会に対してNOを叩きつけ、右往左往する周囲を笑う。50年生きてきて、ここまで人間を嫌いになれるのだろうか。僕には信じられないが、それがモリッシーなのである。そして、どこかにそんな彼に憧れる気持ちがあるのもまた事実なのだ。人間関係というのは、とかくめんどくさい。そんな彼がジャケットでは赤ん坊を抱いていたりする。こんな人間愛に満ちたモリッシーなんて?と一瞬思うが、つまりは、赤ん坊には自我がないから動物と同じなのだ、彼が嫌う「人間」とは別物なのだ、と思うと真逆の意味に転換してしまう。嗚呼、モリッシーよ。なぜあなたはそんなにもモリッシーなのですか。
 上司に怒られたり、彼氏彼女とケンカしたり、友人に裏切られたりしたときはこのアルバムを聞くといい。人間不信になったときにあなたを受け入れ理解してくれるのは、世界で最も人間を嫌いな彼だけなのだから。