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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

生き残った魂の叫び。

eastern youth 極東最前線 巡業 「ドッコイ生キテル街ノ中」
■2010/03/18@札幌cube garden
 会場のcube gardenというところは割と新しいライブハウスで、音楽だけでなくいろいろなイベントで使用されているようだ。いつできたのかはわからないけれど、場所を調べようと思ってgoogleマップで見たらまだ工事中だった。そのくらい新しい建物ではある。キャパは決して大きくはなく、札幌で言うとベッシーホールと同クラスだろうか。ベッシーと同じようにフロアの後方にバーカウンターがあり、1ドリンク付の場合はそこで好きなドリンクを注文することになる。階段を上って2階が入り口になっており、階段の下部分にコインロッカーがある。そこにコートや荷物を入れてTシャツで開場を待っていたのだが、3月の札幌はほとんど雪が融けているとはいえまだ寒い。最初はまばらだった客足も次第に人が集まってきて、開場する頃には階段から出てまだずらっと列ができるほどになっていた。開演頃にはほぼ満員。
 言うまでもなく、昨年吉野の急病によりキャンセルとなったツアーのやり直しである。本人たちはもとより、ファンにとっても重要な再会の場となる。今後のイースタンユースの表現がどうなっていくのかを占う意味でも非常に意味のあるライブになるであろう事は予想していた。そんな期待感が開演前から会場に充満していた。客電が消えたときの歓声は、その観客数からは考えられないほどの大きさだった。何事も無かったかのように3人はステージに現れる。当然、吉野が登場したときには一際大きな歓声が上がっていた。吉野は「そう簡単にくたばってたまるかよ」「憎まれっ子世にはばかる。イースタンユースです。」と言い、そのまま「一切合切〜」になだれ込む。この1曲目の轟音。音圧とテンションでもう十分すぎるほどだった。吉野は帰ってきた。少し痩せたかもしれないが、その演奏には一点の曇りも迷いも無い。
 新作『歩幅と太陽』の曲を中心に、過去の名曲群が惜しげもなく演奏される。魂が震えるようなシャウトと、足元から揺る動かされる轟音、テンションが高まりすぎて空中分解しそうな場面もあったが、ギリギリで踏みとどまる3人のアンサンブル。1曲終わるたびに抜け殻になってしまいそうな信じられない密度でライブは進む。ライブ終盤で、吉野は昨年心筋梗塞で倒れた際の心境を正直に語ってくれた。自分ではいつそういう瞬間が来てもいいと覚悟していたつもりだったが、実際に死というものが目の前に現れると、「ちょっと待ってくれ、今かよ?」と思ったそうだ。つまり、全然覚悟などできていなかったと。やり残したことはある。 それはわかっている。しかしそれ以上に、分かったふりして実は覚悟などできていなかった自分自身の弱さと情けなさに吉野は病気以上に打ちのめされたのではないだろうか。なんだオレは。その程度のもんかと。しかしまた、そんなときに全てを受け入れて死んでいける人間などそんなにいるはずも無いということもまた、事実である。そういうものなのだと思う。イースタンユースはそんなミもフタもない人間の弱さをさらけ出しながら、それでも生きていく人間の姿を正直に写し出してきたバンドだ。吉野自身にとってもバンドにとっても大きな事件だっただろうが、それを乗り越えて復帰した今だからこそ、これまでのイースタンユースの曲がより強く輝き、意味を持つものになった気がする。当然、それは次に生み出される曲もそうなって行くのだろうと思う。療養中、多くのファンが待っていてくれたこと、励ましてくれたことに対して吉野は素直に感謝の意を表していた。この終盤は、会場中ですすり泣くような声も聞こえていた。戻ってこれて本当に良かった。またイースタンユースの曲が聴けて本当に良かった。世の中みんなクソくらえかもしれないが、この瞬間は本当に美しかった。
 アンコールは『感受性応答セヨ』から名曲「夜明けの歌」。そして、鳴り止まない拍手に応えて2度目のアンコールに登場してくれた。改めて感謝した後、吉野は、いろいろな人から励まされた時の思いについて語っていた。世界のどっかで生きている人と繋がっている、この空の向こうでどこかに自分の大事な人が生きている、という事実。それを歌ったという「青すぎる空」を最後に演奏した。激しい、鋭いだけではなく、優しく、温かく、美しい。イースタンユースのエモーショナルな轟音は僕の涙腺を揺さぶって止まない。当然、吉野の一挙手一投足に注目せざるを得ないライブだったが、田森や二宮が楽しそうに演奏していた(ように見えた)のが印象的だった。
 イースタンユース、お帰りなさい。

■SET LIST
1.一切合切太陽みたいに輝く
2.いつだってそれは簡単な事じゃない
3.沸点36℃
4.荒野に針路を取れ
5.明日を撃て
6.踵鳴る
7.脱走兵の歌
8.夏の日の午後
9.砂塵の彼方へ
10.雨曝しなら濡れるがいいさ
11.黒い太陽
12.デクノボーひとり旅ゆく
13.まともな世界
14.街はふるさと
15.角を曲がれば人々の
<アンコール1>
16.夜明けの歌
<アンコール2>
17.青すぎる空