無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

R.E.M.と僕。

Reveal

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 R.E.M.のアルバムで一番好きなのは何かと聞かれたら『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』と答えるし、一番好きな曲はと言えば迷わず「世界の終わる日」と答える。R.E.M.はどんなに社会的な内容の曲を歌っても、常にその中心には自分対世界という孤独感があった。時に攻撃的に時に内省的に、周りの世界との距離をノイズとしてピリピリと発していたバンドだった。「世界の終わる日」のここぞとばかりに鳴らされる不協和音のリフはその違和感そのものだった。僕がそういう意識でR.E.M.を聞いてたのはギリギリ『ニュー・アドベンチャーズ・イン・ハイ-ファイ』までだった。
 前作『UP』で3人編成となったR.E.M.。エレクトロニクスとアコースティックを絶妙にブレンドしたサウンドは全く違和感なく、この編成での完成形と言ってもいいだろう。メロディーの充実さもここ最近では最高だ。すごく自然に聞ける、いいアルバムだと思う。そう、自然に聞けてしまうのだ。滑らかで完成された音は僕の耳に引っかかることなくするっと抜けていってしまう。それが、すごく寂しい。
 94年の『モンスター』を最後に彼らは自分たちを取り巻く狂騒から自ら距離を取った。実際、既に彼らは「世界で最も重要なバンド」ではない。しかし、マイケル・スタイプの声は僕にとって、自分を見つめるときにやはり今でも必要なものなのだ。寂しいと思いつつもこのアルバムを何度もリピートしてしまうのは、そういうことなんだと思う。何を聞いていいか分からなくなったときにいつでもそこに立ち戻るバンド。僕にとってのR.E.M.はきっとこれからもそういうバンドであるのだと思う。
 確かに寂しい。でもこのアルバムを嫌いになることはできない。