無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ウェルカムバック、ウィーザー

Weezer (Green Album)

Weezer (Green Album)

 瑞々しいメロディ、弾けるようなギター、シンプルな演奏。3分間のポップ/ロックの見本のような曲が並ぶ。や、単純にすっごいいいアルバムだと思う。曲も粒が揃ってて、リヴァースという人のソングライターとしての能力がいやってほど分かるアルバムだとも思う。
 ただ、ここには痛々しいまでに自分をさらけ出し、行き場のないエモーションを歪んだギターでもって爆裂させるリヴァース・クオモはいない。それを物足りないと思うファンももしかしたらいるのかもしれない。けど、それはリヴァースがハッピーだとか強くなったとか言うのとは違うと思う。基本的にこの人は何も変わっていない。弱虫で情けないロクデナシのままだと思う。表に出すのをやめただけだろう。それは痛みを伴うから。リヴァースはその痛みに向かい合えなかったのだろう。このアルバムのポップさ、明るさは痛みから逃げる弱虫の理論武装だ。だからこそこんなに切なく、美しいのだと思う。
 とにもかくにもウィーザーは戻ってきた。リヴァースは引きこもっているだけではダメだった。彼の中にはまだ、音楽に向かわざるを得ない理由があるということだ。今度はそれを力強く鳴らしてくれることを望みたい。それはきっと、このアルバムよりもさらに強い光を放つはずだ。