無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ミッシェルの覚悟。

 彼らは無理に世界の果てを鳴らそうとか、新しい国を作ろうとかしているのではない。結果、そう感じる人がいたとしてもそれは関係ない。彼らは単にミッシェル・ガン・エレファントであろうとしているだけだ。ロック・バンドとして自らを転がそうとしているだけだ。相変わらずロックとしての音の強度は増しつづけているけども、正直、このアルバムには今までのミッシェルと特別違う何かがあるわけではない。だからこそ、その彼らの意思が今まで以上に明確に感じられるアルバムだと思う。
 かつてブランキーがそうであったように、ミッシェルは日本のロックの頂点に立つバンドとして、多くのファンの期待や願望や批判を受けることだろう。で、それを避けることなく真正面からロックに向き合っていくだろう。単に言語感覚が似てるというだけでなく、僕には「シトロエンの孤独は続く」と「3104丁目のダンスホールに足を向けろ」というフレーズが同じ位相で鳴っているように思える。
 万人に愛されるポップな曲を書くわけでもないし、先鋭的、実験的な音で人々の度肝を抜くこともない。自分たちはロックバンドでしかない。それを全うすることしかできない。そんな決意からしか「赤毛のケリー」のような名曲は出てこない。全てを引きずって全力疾走し続けるミッシェル。ブランキーは消え、イエモンが姿を隠している今、ロックの美学を体現できるバンドは彼らしかいない。だからこそ、僕達も彼らにロマンを投げてみたくなるのだ。