無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

睡眠は大事です。

インソムニア [DVD]

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 『メメントid:magro:20020520#p1)』のクリストファー・ノーラン監督最新作。『メメント』公開以前から動いていた企画だそうだけど、『メメント』がヒットするか結果が出ていない時点でスティーブン・ソダーバーグジョージ・クルーニーといったハリウッドの大物が製作に名乗りをあげているあたり、この監督に対する期待度はかなりのものということがわかる。僕と大して年も変わらないのにねえ…。
 アル・パチーノ演じる刑事は、女子高生殺人事件の捜査のために同僚とともにアラスカの小さな町にやって来る。犯人を追い詰めるも、ミスにより自らの手で同僚の命を奪ってしまう。しかし、とある過去の出来事から、パチーノはこの同僚の死を歓迎している自分にも気づく。その心の隙を突いてパチーノに共犯関係を持ちかける犯人。過去と現在の自分の行為に悩むパチーノ。そのパチーノをさらに追い詰めるのは白夜。太陽とストレスで町に来て以来眠れない日々が続く。… てな感じ。
 猟奇的な手口の殺人事件を追いかける心理サスペンスかと思いきや、実は事件そのものにはあまり大きな意味はない。軸になるのは主人公パチーノの心の葛藤とそれを巧妙に利用しようとする犯人の手口、そこにパチーノに疑問を抱くヒラリー・スワンク演じる地元の刑事が絡むという、骨太なドラマ。『メメント』では記憶障害という設定を巧みに生かした時間逆行演出というアイディアで驚かせてくれたノーラン監督だが、今度は実に正攻法で重厚なドラマを見せてくれた。何でもできるのね、この人。映像も非常に綺麗。ストーリーもひねりがあって面白いのだけど、パチーノがとにかく出ずっぱりで濃いい演技を見せるので彼が苦手な人は辛いかも。逆に、抑えた演技で存在感を見せたのが犯人役のロビン・ウィリアムス。悪役自体彼には非常に珍しいけれども、不必要なアドリブも話芸も使わずに薄気味悪い知能犯を好演していた。こういう役、もっとやってみれば面白いと思う。
 97年のノルウェー映画のリメイクだそうだけど、オリジナルを知らないので比較は無理。でも多分こっちのほうが面白いと思う。根拠ないけど、なんとなく。