無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

究極のB級として。

■a K2C ENTERTAINMENT 米米CLUB 再会感激祭『マエノマツリ編』
■2006/10/14@さいたまスーパーアリーナ
 不覚。一生の不覚。所用にて仕方が無かったとは言え、開演に遅れてしまうと言う屈辱。屈辱er大河原上もびっくり。そんなこんなでひっそりと静まり返ったさいたまスーパーアリーナだったが、中は盛り上がって異常に暑かった。ステージは白を基調に、おおきなプロペラが上部に設置され、両側に大きな階段があり2段構造となっている。全盛期の米米からすればややこじんまり?したセットだが、その造形や細部には彼ららしいこだわりが見える。
 僕が入場した時には既に中盤、ジェームス小野田の登場部分だった。そのまま「かっちょいい!」「この宇宙で」と、新旧ファンクナンバーを披露する。やや流れをさえぎる感じで石井のソロ「君を離さない」に行くが、その後のMCと小野田との絡みはさすがで、とにかくサービス精神旺盛に笑かしてくれる。小野田氏もノリノリで、アドリブを交えて石井をたじろがせる一幕も。そのまま「渚のバルコニー」のカバーという異常な展開から「E−ヨ」に。この曲、テンポはゆったりなのだけど、会場との一体感が強いので生だとすごく盛り上がる。そのまま、今回の再結成テーマソングとも言える「WELL COME2」で本編終了。
 アンコールは、まずリクエストメドレー「マエノマツリ」編。当然、「アトノマツリ」では違う構成になっているわけだ。「I・CAN・BE」〜「愛はつづいてる」〜「ひとすじになれない」〜「SEXY POWER」〜「ヘイワノセカイ」〜「アジテーション」〜「君がいるだけで」〜「狂わせたいの」という流れ。豪勢な流れだが、ややPOP寄りのセレクトなのかなという印象。(これまでのセットリスト的にもそんな感じがした。)「アトノマツリ」ではもう少し熱い曲中心になっていたのかも。皆でハンカチを手に「ごきげんよう!PARTY NIGHT」へ。この曲、初めて収録されたのが『聖米夜』という、中身の無い企画盤的な作品だったので、個人的にはあまり思い入れが無いのだけど、なぜかベストなどではよく収録される人気のある曲のようだ。そして最後はやはりこれ、「Shake Hip!」。客層は半分以上は以前からのファンだと思うので、それなりにお年を召した方々が多かったと思うのだけど、みんな踊る踊る。おなじみのジャンプもしっかり決めて、これでもう汗だく。再度のアンコールは、こちらもデビュー20周年を迎えたアマゾンズをゲストに迎え、「Just U '06」で締め。開演が13時という異様に早い時間だったため、もっといろいろと仕掛けが用意されているのかと思ったけど、普通に終了した。その辺、ちょっと肩透かし的な印象もあるにはあるが、僕はまあよかったのではないかと思う。凝った仕掛けとコンセプトを持ったステージ、コントや寸劇を交えたエンターテイメント・ショウ、観客を交えての振り付けダンス、よりどりみどりのグッズ展開など、今でも他のバンド(ex.氣志團グループ魂など)が行っているもののルーツがここにあることを示せたと思うし、今回の再結成をこれだけのファンが待ち望んでいたというのは、それに代わるものが(石井をはじめとするソロ活動含め)無かったということの証明でもあったと思うからだ。
 そして、ご存知のようにツアー最終日の横浜アリーナにおいて、重要な発表があった。再解散を撤回し、活動を継続するというものである。今回の再結成の盛り上がりを受けてのものだろうが、果たしてこれがよかったのかどうなのか、現在の時点で僕には判断がつかない。今回のツアーも、期間限定という中での盛り上がりだった部分もあると思うし。
 彼らのエンターテイメントの根幹は「究極のB級」とでも言うべき美学であると思う。A級を狙うのではなく、B級を極めるという発想。様々な要素を盛り込んだサウンドやステージの雑然とした感覚や、どこか胡散臭いニセ者っぽさにこそ、彼らの真髄を見て取れる。当たり障りの無いポップスを大量生産し、(石井のエゴの表出でもある)アートっぽさが強調された90年代後期の活動は、僕には刺激の無いものだった。再結成アルバムがどういう内容かは分からないし、今後の彼らの活動がどのようになるかは未知数なのでなんとも言えないが、いい意味でイイカゲンに活動を継続してもらいたい。シーンのど真ん中ではなく、脇のほうでチョイチョイとにぎやかし程度に場を盛り上げるくらいがちょうどいいと思う。最大限の愛と敬意を込めて言うが、そういうバンドなのだ。