無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

舞台の裏から風が吹く

eastern youth 極東最前線/巡業〜地球の裏から風が吹く〜
■2008/02/15@札幌ペニーレーン24
 札幌は前日から風と雪が強く、かなりの悪天候。さすがにギチギチとまでは行かないが、開演までには後ろまでちゃんと埋まっている。登場した3人はゆっくりと所定の位置につき、おもむろに演奏を始める。1曲目は「地球の裏から風が吹く」。ギターの音がデカイ。もとよりディストーションがかかっていることもあって高音はほとんどつぶれている。耳が痛くなるような轟音。ボーカルと比較してもちょっとバランス的に大きいんじゃないかと思った。
 つかみのMC。「私アンポンタンゆえ上手く話せませんので、こいつ(ギター)に話してもらいます」と吉野。ポロンポロンとギターを弾き、「通訳します」。このやりとりが結構ウケていた。札幌の前は青森だったのだが、船で移動してきたらしい。相当揺れたようだ。この日は猛吹雪だったので「何でこんな時期に北海道に」とも言っていた(地元のくせに!)。こんな時期にツアーやるあんたがたのせいでしょ、と思ったが、そんな悪天候の中集まってくれたことに感謝の意を表しつつ再びギターをポロン。「通訳します」「最後までごゆっくり」。渋いなあ。新作の曲中心にセットは進む。個人的に好きだからというのもあるが、「野良犬、走る」のサビでのたたみかけるようなテンションの上がり方はライヴの方が断然いい。吉野は肩をすくめ、身をよじるようにして声をふり絞る。ざっくりしたギターのストロークとこの声だけで、目の前に分厚い音の壁が立ち上がってくる。二宮のベースも相変わらず動きまくるのに安定感抜群。田森のドラムはあの大きなガタイに似合わず几帳面なプレイなので面白い。「ギラリズム〜」からは昔の曲も増える。基本的にイースタンユースのライヴはウォーと盛り上がるよりは観客が各々じっくりと聞いている雰囲気なのだけど、「青すぎる空」の時はどよめきにも似た歓声が起こった。「いずこへ」も同様。曲前のMCは相変わらず飄々と、しかし坊さんの説法を聞いているようにいつしか話はシリアスになり、次の曲のテーマへと踏み込んでいく。ツアーで各地を旅している話から「旅行者たち〜」へ、そしてお昼休み何してんの?「笑っていいとも」見てんの?から「白昼の〜」へ。前作のツアーは見ていないのだけど、ライヴ中こんなに楽しそうに喋る吉野を見たのは記憶にない。昔に比べれば冗談も多く、大分彼も変わったと思う。最高だったのは本編最後のMC。詳細はうろ覚えなんだけど、自分たちはこうやって心血注いで音楽を作ってライヴをやり、こうして見に来てくれるお客さんもたくさんいて、非常にありがたい、でもしかしそれでもどうしても自分らの曲は合わない、受け入れられない、と仰る方がおりましたら、まことに申し訳ないですが、「全員死ね!(中指立てて)」。観客大喝采、である。本編ラストは「沸点36℃」。平熱で十分、36.5℃で大沸騰。素晴らしいクライマックスだった。ちょっと泣いた。
 「廊下が寒かったので」あっという間に戻ってきてアンコール。配信限定という新しい試みとなった新曲「赤い胃の頭ブルース」を含む3曲。ラストは前作から「荒野に進路を取れ」。この曲がラストに来ることで、目の前が開けたような感じになる。すごくよかった。イースタンユースのライヴというのはこれまでの経験だと、すごく重たいものを受け取ったような、終わった後にふうっとため息をつくような、そんなものだった。しかしこの日は緊張感こそ変わらずにあったものの、非常に素直に楽しめた。そんなに入れ込んで聞いているわけではない嫁ですら楽しめたのだから、そういうライヴだったのだと思う。外に出てみるとやはり吹雪。でも、向かい風に逆らって家路に着いた。また明日に向かって人生は続く。いい夜だった。

■SET LIST
1.地球の裏から風が吹く
2.滑走路と人力飛行機
3.五月の空の下で
4.野良犬、走る
5.ギラリズム夜明け前
6.青すぎる空
7.いずこへ
8.雨曝しなら濡れるがいいさ
9.旅行者たちの憂鬱
10.踵鳴る
11.白昼の行方不明者
12.サンセットマン
13.沸点36℃

14.夜がまた来る
15.赤い胃の頭ブルース
16.荒野に針路を取れ