無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

この日常に灯をともそう。

eastern youth  極東最前線/巡業2011「アノ窓、コノ窓、灯火トモセ。」
■2011/07/08@心斎橋クラブクアトロ
 入魂の新作『心ノ底ニ灯火トモセ』を引っさげてのツアー。心斎橋クラブクアトロは初めてだったのだけど、キャパは小さめのライブハウス。ステージを中心に何層か壁と言うか仕切りがあって、そこはドリンクを置くスペースにもなる。こじんまりしてて、なかなかいいハコだと思う。
 イースタンユースは元々、生きること、生活することがそれだけでどれだけ大変で尊くてめんどくさいものか、ということをテーマにしてきたバンドだ。いろいろ辛いことがあっても前を向いて歩いていくしかないと言う事実に、我々の日常と同じ目線で真正面から向かい合うバンドだ。2009年吉野寿心筋梗塞で倒れ、復帰してからの彼らのライヴは、表向きは大きく変わったところはなくとも、そのテーマをどう掘り下げるかという点においてより精度が高く、よりテンションも高くなって行っているように思う。吉野の血管がブチ切れそうになるあのシャウトを見るたびに、またどっか悪くなるんじゃないかとすら思うのだ。
 新作の曲を中心に、代表曲を交えつつの堂々たるセット。益体もないMCは居酒屋での酔っ払いの会話のようでいて、油断している隙に本質を射抜く言葉が現れる。そうして、怒濤のように演奏が始まる。この繰り返し。「沸点36℃」で最初に涙腺が決壊して以降、ずっと僕の目には大雨が降っていた。後半の「男子畢生〜」から本編最後の「素晴らしい世界」までは、客のテンションも上がりっぱなしの代表曲オンパレード。札幌以外でイースタンユースを見るのは初めてだったと思うのだけど、ちゃんとファンがいるんだと思って(当たり前だが)うれしくなった。2度応えてくれたアンコールは「夜明けの歌」「一切合切〜」、そしてラストに「夏の日の午後」と、感動的なまでの名曲集。この時期に「夏の日の午後」はずるいとしかいいようがない。途中、チューニングが合わず四苦八苦するハプニングもあったが、最後までテンションは緩むことなく、爆音と魂を叩きつけた。
 僕たちの日常は3月11日以降変わってしまった。普段の生活に大きな影響がない人間でも、変わってしまったと言わざるを得ないのは誰もが理解しているだろう。その日常を、相変わらず吉野は爆音でシャウトする。震災前に書かれたはずの言葉が、この時だからこそ異なる意味を持ってまた目の前に立ち上がってくる。そんな瞬間が山ほどあった。「逃げても 逃げても 逃げても 朝が来る/涙よ止まれよ 今すぐ もう 朝だから」(夜明けの歌)
 歩いていくしかない。生きていくしかない。

1.ドッコイ生キテル街ノ中
2.靴紐直して走る
3.這いつくばったり空を飛んだり
4.沸点36℃
5.荒野に針路を取れ
6.東京west
7.踵鳴る
8.雑踏
9.午前0時
10.尻を端折ってひと踊り
11.男子畢生危機一髪
12.青すぎる空
13.雨曝しなら濡れるがいいさ
14.素晴らしい世界
<アンコール1>
15.夜明けの歌
16.一切合切太陽みたいに輝く
<アンコール2>
17.夏の日の午後