無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

完璧な未来。

 オリジナルとしては『Wild Peace』以来1年10ヶ月ぶり。その間、ベスト盤が出たしツアーもやってるしフェスも出まくっていたのでそんなに久しぶりという感じはしない。というか全くしない。しかし、前作と本作ではかなり大きな隔たりがある。ベスト盤発表を機にここからまた再スタートくらいの気合が見える。簡単に言うと、前作のようにゲストボーカリストを呼んでの歌モノ3部作的な目玉が無い。その分、インストバンドとしての楽曲の良さとバラエティさが求められるわけだ。が、ここに来てメロディーの豊かさもアレンジの幅も一段階レベルアップしたような印象を受ける。タイトル曲の切迫したリズムと雰囲気、「Me & My Skyline」の爽快感、「964スピードスター」のハードボイルド、アダルトなムードの「Last Temptation」など、今までの延長線上と新しい試みとが一体となっている。ゲスト歌モノの後ということで言えば同じ状況のアルバムはこれまでもいくらでもあったが、それに比べても気合の入り方が違うように思える。
 とは言っても今回もゲストボーカリストとして元KEMURI伊藤ふみお氏が「Pride of Lions」に参加している。ライヴ感想でも書いたが、ゲストというよりは半ば準メンバー的に現在は活動を共にしているような雰囲気さえある。この曲がアルバム中でもクライマックスなのは間違いないが、そこに至るまでのストーリーを他の楽曲できっちりと作っているからこそだと思う。「女神の願い」は久々の欣ちゃんボーカル曲だが、最初の頃に比べたらだいぶ上手くなったよなあ、と感慨もひとしお。タイトルに込めた意味はいろいろあるのだろうけど、40過ぎたオッサン連中が「完璧な未来」なんて言葉を堂々と掲げられるのはカッコイイと思う。デビュー当時の若い頃から見て今が「完璧な未来」なのか、今からそれ以上に「完璧な未来」を目指すのか。どちらにしろ、なかなか言える言葉ではないと思う。覚めた視点をあざ笑うかのように正面突破でハッピーをわしづかみにする豪胆さ。これが今のスカパラの大きな魅力でもあるのだと改めて確認した。