無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

タイムレス。

SPITZ JAMBOREE TOUR 2007-2008 “さざなみOTR”
■2008/10/23@Zepp Sapporo
 スピッツを札幌で見る時はほとんど厚生年金会館だったので、フェス以外でスピッツをスタンディングで見たのはかなり久しぶりのような気がする。もしかしたら初めてかもしれない。『さざなみCD』のツアーということになるのだけれども、大きく前後半に分かれる長い長いツアーであり、すでにアルバム発表してから1年が経っているので割とフラットな状態で気楽に見ていた。『さざなみ』の曲も、古い曲も自分の中ではどれも同じラインにあるような感じ。セットとしては『さざなみ』の曲が多いとは言え、最近のアルバムからの曲やもっと古い曲、最新のシングルまでを網羅した幅広い選曲。そのどれもが聞き覚えのあるアレンジから変わっているわけでもないのに、違和感なく「今の」スピッツのモードを象徴するように聞こえるのは素晴らしいと思った。素晴らしいと言うか、おかしい。ありえない普通こんなの。どんなバンドだって昔の大ヒット曲をライブで演奏すれば特別な盛り上がりになる。それに比べて新曲の印象が薄いなんてことにもなる。でも、「チェリー」も「渚」も「スピカ」も、確かに大きな歓声は上がるけれども、他の最近の曲と観客の受け止め方が基本同じなのだ。スピッツというバンドは、もうこの芸風で行こうと腹を括ったんだろう。何をやってもこうなってしまうんだから、じたばたするのはやめようと思ったんだろう。『さざなみCD』の素晴らしさはスピッツが真正面からスピッツの曲を演奏したと言うことに尽きると思うのだけど、この日のライブもまさにそういうものだった。
 北海道ということでホークスファンのマサムネは「ファイターズ、残念でした」とねぎらってくれた。そしてこの日一番盛り上がったMCのネタは北海道限定で発売されているマルちゃん「やきそば弁当」の話だった。本編終了後楽屋に戻ったらやきそば弁当が用意されていたらしい(笑)。
 「発表当時以来、一度もライヴで演奏したことがない」というメジャーデビューアルバムからの「死神の岬へ」というのも意外ながらうれしかった。実際、僕はほとんどどんな曲だか覚えていなかったけど。この曲と「ヒバリのこころ」から最新シングル「若葉」まで、約18年。歌詞こそ若干時の流れ(というか、マサムネという人の変化)を感じさせるものの、全てが一直線に並んでいる。バンドのたたずまいと同じように時間感覚が麻痺してしまいそうな2時間だった。ライヴ前、開場を待つ列に並んでいると、僕の後ろにいたのはメジャーデビューどころか「ロビンソン」すらリアルタイムで知らないであろう高校生だった。僕よりお年を召した40代以上の方や、親子で来ている人、まさに老若男女がひしめき合っていたこの日のゼップ。「あと10年もしたらスタンディングでやるのもお互いきつくなるかもしれないけど」なんていう自虐的なMCも半分本気に聞こえるほどの客層の広さ。なんかもうすでに、スピッツもサザンやミスチルの域に入ってきているような気がする。簡単に言うと、「化け物」。そんな思いで癒された夜だった。

■SET LIST
1.メモリーズ・カスタム
2.Na・de・Na・deボーイ
3.ヒバリのこころ
4.不思議
5.点と点
6.ルキンフォー
7.チェリー
8.桃
9.砂漠の花
10.みそか
11.若葉
12.死神の岬へ
13.ネズミの進化
14.スピカ
15.エスカルゴ
16.8823
17.渚
18.俺の全て
19.俺のギター
<アンコール>
20.けもの道
21.群青
22.スパイダー