無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

スガさんのSM露出羞恥プレイ。

FUNKAHOLiC(初回生産限定盤)(DVD付)

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 スガシカオ約2年ぶりのオリジナルアルバム。昨年ベストアルバムとライブベストアルバムを出し、デビューから10年を経て心機一転という感じ、なのかどうかは知らないけど「ファンク中毒」というど真ん中なタイトル通り彼のファンク志向が前面に出たアルバムになっている。前作『PARADE』はむしろ非常に狙ってポップに振れたアルバムだったのでその反動なのだろうか。というか、前述のようにキャリアが一回りし、ここらで自分の欲望全開に好きなようにやろうという感じなのだろうか。むしろそっちの方が強いような気もする。
 1曲目「バナナの国の黄色い戦争」からタワー・オブ・パワーを髣髴とさせるようなベースブリブリ、ホーンバリバリの濃密ファンク。タイトル曲もそうだし、先行シングル「コノユビトマレ」もチョッパーブリンブリンでそれだけで濡れてしまいそうだ。しかし曲自体は、そういうもろファンクなものだけで通されているわけではなく、彼らしいポップセンスを生かしたバラードや小品もある。そういう曲で目に付くのは歌詞。スガシカオの曲の本質である(と、僕が思っている)恋愛に対する徹底してシニカルな視線がここでも本能全開とばかりに爆発している。
 「プラネタリウム」では今でも思っている女性に対して「風に揺れてる風俗のポスター/一瞬君に見えた」である。元カノへの恨み節としてこれほどの破壊力を持つフレーズを僕は知らない。「潔癖」の倒錯した男女模様もああ、いかにもスガシカオだなと思わず笑ってしまう。僕にとってのスガシカオというのは人間のどうしようもない欲望や性や業というものを隠すことなく目の前に引きずり出すことによる羞恥プレイがそのキモだと思うので、もっとどんどんこういう曲を書いて欲しい。「コノユビトマレ」もサウンドは最高(だって、ベースが有賀啓雄でドラムが屋敷豪太だぜ)なのだけど、通り一遍の応援歌的な歌詞が個人的にはすごくつまらない。どうせならもっとイキきってほしい。本作のジャケットだってこんなにエロくダサいものになっているのだから(ファンクにとって、この過剰なダサさというのは必須だと思う)。ぶっちゃけ、今のスガシカオならもっとどぎつい表現やサウンドでも受け入れられるのではないかと思う。それは彼が10年間ファンクを基調としたこの音楽で日本のメジャーシーンの中でもがき戦い、築いてきた戦果だと思うのだ。今まで蒔いてきた種を刈り取るような時期にきっと彼は来ているのだと思う。もっともっとさらけ出すべきだ。