無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2009 in EZO(5)〜イースタンユースが太陽みたいに輝く。

■2009/08/15@石狩湾新港

 ユニコーン後、嫁と食事に移動。ユニコーンの話で盛り上がり、余韻に浸る。彼らの全盛時、がいつなのかは微妙だが、『服部』〜『ケダモノの嵐』時とするとオレ高校〜大学、嫁小学〜中学くらい。どっちもそれなりに思い入れがあるものだ。ブラブラと会場内を歩いていると、花火が上がる。携帯で花火を撮るのは本当に難しい。一生懸命設定を変えたりタイミングを合わせたりするくらいなら最初からあきらめてじっくりきれいな花火を見ていたほうがいい。
 テントで渋さ知らずを聞きながら休んだ後、ムーンサーカスのLOOPAに向かう。先に行っていた嫁と合流し、しばし踊った後ボヘミアンガーデンへ移動。スカパラを見るつもりだったのだが、当然ながらすごい人。ボヘミアンガーデンの許容量をはるかに超えている(というか、ステージ上にバンド全員乗るのかという世界)。近くのテントまで客がはみ出ようかというくらいの混雑。ああ、こりゃあダメだなと思い、その辺の草むらで座って聞くことにする。始まってしばらく聞いていたのだけど、いつの間にか眠ってしまった。気がつくとステージでは「WHITE LIGHT」とかやって盛り上がっていた。どうやら最後の方らしい。結論から言うと、こんな狭いところでやるなよスカパラ、ということなのだけど、結果的にここで仮眠とって休んだのが最後に効いた。今年はこれがなかったら最後まで持たなかったかも。
 LOOPAではちょうど卓球が始まろうかというところ。今年は瀧はプライベートでも来ていないらしい(他の仕事だったのかな)。僕はイースタンユースを見るためにアーステントへ移動。ボヘミアンからアース。それはつまり会場の端から端へ横断するということ。歩き甲斐がある。約30分近くかけて歩いてようやく到着。定刻よりも若干早いくらいの時間で始まった。僕はもう今年はこれを見れば後はフリーくらいの気持ちだった、イースタンユース。始まる前から夜中の1時とは思えないくらいの熱気と盛り上がり。吉野はちょっとうれしそうな顔をしながら「何時だと思ってんだ!もう寝ろ!」と悪態をつき笑いを取る。楽屋裏では怒髪天の増子兄ィが飲んでいたらしいが、「こんな時間まで騒いでるのはここの客かの○ピーくらいだ」と言って笑っていたらしい。出たばかりの新作『歩幅と太陽』から、「一切合切太陽みたいに輝く」でスタート。ものすごい音圧とテンション。それに負けない吉野の声。グイグイと前に進んでいく力強いサビのメロディー。新作はいつになく肯定的なムードを纏った傑作だが、そのアルバムのテーマとして相応しい、エネルギッシュな名曲だ。曲間で、吉野はギターをぽろぽろと爪弾きながら鼻歌を歌ったり、独り言のように喋りだしたり。どうと言うことはない話がいつしか核心に近づき、次の曲のテーマに繋がる。そして怒濤の演奏で曲が始まる。これはなかなかその場にいないとわからないのだけど、あっという間に引き込まれるのだ。くだらない与太話に笑っていたと思ったら、いきなり目の前に包丁を突きつけられたような衝撃。「沸点36℃」「荒野に針路を取れ」と、過去のアルバムから1作1曲的な感じでキーになる曲を演奏していく。「夏の日の午後」が始まったときは、テントが揺れた。イースタンユースのライヴでこういう言葉は適切ではないかもしれないけれど、まるでベストヒット集のようなライヴだった。ステージ前ではモッシュが起こりぐしゃぐしゃに盛り上がっていたが、ふと隣を見ると微動だにせずにステージを見て泣いている人もいた。イースタンユースのライヴとはそういうものだ。
 どの曲の前だったかは忘れたが、吉野のMCで覚えているものがある。正確ではないけれど、こんな感じ。「俺はこうやってちょっと高いとこにいて演奏したりしてるけれど、ロックスターだかなんだかになる気はさらさらない」「俺はお前らと友達になりたいわけよ。いい?」「でもなんでお前らはこうやってライブだ何だのときは集まってくるくせに、俺が駅前で一人で飲んでるときは誰ぁれも来ないんだ?」「人付き合いは苦手よ。嫌い。」「でも、人間は好き。」
 特に最後の2行は、イースタンユースと言うバンドのほぼ全てを言い表しちゃってるんじゃないだろうか。そんな気がした。特に最新作はそういうアルバムである。新作から「まともな世界」そして、「街はふるさと」で終了。素晴らしかった。少なくともライジングサンだけで見れば、彼らのステージの中で今までのベストだったんじゃないだろうか。最初見た感じでは彼らのファンだけではなく、ちょっと時間空いたので寄ってみた的な人もいたのだけど、途中で帰る人はほとんどいなかった。圧倒的に勝った、という感じのステージ。太陽のように輝いていた。

eastern youth
1.一切合切太陽みたいに輝く
2.沸点36℃
3.荒野に針路を取れ
4.夏の日の午後
5.砂塵の彼方へ
6.雨曝しなら濡れるがいいさ
7.いずこへ
8.まともな世界
9.街はふるさと


 LOOPAで踊っていた嫁と落ち合い、夜食。昨夜同様そんなに寒くはないが、動いていないとそれなりに冷えてくる。こういうときはラーメンで決まり。うまい。しばし休んだ後、LOOPAで最後まで踊ることにする。ちょうど、田中フミヤが回していて、最後のTOBYに。TOBYは昨年もラストだったが、とにかく大ネタも使って楽しけりゃ勝ちみたいなプレイをする。踊っているうちにだいぶ明るくなってくる。出たり入ったりはあるが、最後の方は大体踊っている顔ぶれが決まってくる。なんとなくだけど、最後LOOPAで朝日を迎えると言う人たちの間にはどっか仲間意識のようなものが芽生えてくる気がする。後半はサカナクションPerfumeをそのままかけてしまうというサービスぶり。最高。ステージを降りてみんなとハイタッチするTOBY。パッと見ぜんぜんDJには見えないんだけどね。どう見ても坂田明なんだけど。でもいいキャラだTOBY。ムーンサーカスから音が消えた時点でもうすっかり夜明け。太陽も昇っている。天気がよく、見事に朝日を迎えることができた。今までの10年間でも1,2を争うくらいのきれいな朝日である。
 ピロウズを聞きながらテントの撤収作業。年のせいもあるけど、さすがに疲れている。ゴミを捨て、全てが終わったステージ前で写真を撮り、会場を後にする。終わってみれば総じて天気もよく、朝日も見れたし、個人的にもどれもいいステージだったので非常に良かった。どこにいるにしてもそれほど混雑や混乱は感じなかったし。しかし、いいことばかりでもない。人が昨年より少なかったと言うのは事実だろうし、それはアーティストの顔ぶれとか通し券のみの販売形式とかいろいろな要因があると思う。フェスバブルが過ぎて落ち着くところに落ち着いてきたと見ることもできるだろう。しかし、このまま減ってきてしまえば今の形でのライジングサンが維持できなくなるのでは?という不安もある。不景気の影響を受けてか、今年はスペースシャワーTVなどこれまであったはずのブースがなくなっていたりした。そういう面でちょっと寂しさを感じたのも事実。今のままでも固定客はいると思うけど、常に変革しより良いフェスになっていかなければ先細りするだけだと思う。
 今年は昨年までプロデューサーを務めていたウェスの山本博之氏が独立したため、新たな体制でのフェス運営、だったはずだ。基本そういうことは客には関係のない裏の話ではあるけれど、気にならないといったら嘘になる。今後、独立した山本氏のマウントアライヴという会社が新しく北海道でフェスを立ち上げるという噂もある。ライジングサンというブランドはこの10年でひとつ確立したとは思うのだけど、それに安穏としていたらすぐに淘汰されてしまう。僕はライジングサンが好きだし、今後もずっと続いて行ってほしいのだ。参加者として、そのためにできることはします。また来年です。