無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2009 in EZO(4)〜そして、ユニコーンは伝説になった。

■2009/08/15@石狩湾新港

 フライングキッズのあと、ユニコーンのためにサンステージへ移動・・・なのだけど、少し時間が余っている。その間にちょっとでも怒髪天を見たいと思い、アーステントまで行く。サンステージではまだBEGINの演奏が続いていた。ちょうどステージ前を歩いていると「涙そうそう」が始まってどよめきと歓声が上がる。何度も何度も書いているが、フェスという不特定多数を相手にする可能性がある場ではヒット曲の力の偉大さを思い知らされる。誰でも知っている曲を持っていることは大きな強みである。アーステント(やっぱり遠いな・・・)に着くと、すでに怒髪天が始まっていた。テントの最後部まで人があふれ出している。さすが、ライジングサンの裏番長である(注:表番長はスカパラ)。「労働CALLING」「ロクでナシ」「宿六小唄」など、とにかく楽しく盛り上がる。周りを見ると、祭太郎も普通に衣装のままで見ていた。見た目的には浮いているのに違和感なくとけ込んでいたので笑った。増子兄ぃのMCはいつものごとく冴えていて、逮捕されたばかりの酒井法子をネタにして笑いをとっていたりした。「マンモスうれピー」とか言ってた。18時を過ぎたあたりでぱらぱらとユニコーン目当てと思われる人たちがアーステントから移動し始める。それを見た増子兄ぃが「さっき楽屋裏で阿部君と話しまして。トイレに監禁しときましたから。急がなくても俺らが終わるまでまだ始まりません。」と言っていた。面白い。我々も申し訳ない、ということでサンステージに移動する。
 ユニコーン。復活した今のユニコーンがどうすごいのか、ということはアルバムやツアーの感想で散々書いたので繰り返さないけれど、「ロックフェスにユニコーンが出ている」という事実が、まず興奮させられるものなのだ。まだ日本にロックフェスなんて無かったのですよ、ユニコーンが解散した1993年には。民生はいいとして、他のメンバー、特にテッシーとかEBIとかはフェスのステージなんて経験無いだろう。そんなユニコーンがすっかり定着した現在の日本のロックフェスという場でどんなステージを見せるのか、それはこの再結成のうちに見ておくべきだと思った。ムーンサーカスのサカナクションをあきらめる価値があると思ったのだ。
 サンステージ前は今年一番じゃないかと思うほどの混雑。ものすごい歓声と共に揃いのツナギを着た5人が登場する。1曲目はツアーと同じく「ひまわり」。どっしりとスケールの大きなメロディーが日の暮れた石狩に広がっていく。続いて聞こえてきたリフは・・・「服部」だ!ツアーでもやってなかった曲をここに持ってくるか。うわ懐かしい。「ペケペケ」も個人的にはツアーではこれを聞けなかったセットだったので嬉しい。その後は基本的にツアーのセットを短く凝縮したような密度の濃い内容。「すばらしい日々」が聞けたのがやっぱり嬉しかった。感激だった。川西さんがこの曲を叩いている、という事実がもう見ていて何とも言えない気持ちになる。ツアーとは違い時間も限りがあるのでさすがにMCもあまりダラダラと長くしゃべることは無い。それでも、曲間の基本的にゆるゆるとした雰囲気はユニコーン独特のものだ。「WAO!」のイントロアクションも控えめに、阿部BのフライングVが印象的なギターリフを刻む。イントロから大歓声の「ヒゲとボイン」に続き、クライマックスの「大迷惑」へ。若い人にとっては、奥田民生がステージ上を走り回り転げ回ってハンドマイクで歌う姿など、想像もできなかっただろう。40をとうに過ぎた民生が「大迷惑」を歌う姿は何度見てもこれだけで感動的だ。ラストは『シャンブル』から「HELLO」。代表曲は押さえ、新作のモードもきっちり見せる、実に堂々としたステージだった。再結成したユニコーンはすごい。演奏もそうだが、今のシーンにきちんとコミットし、期待されている役割をきちんと引き受けるその姿勢がすごい。誤解を恐れずに言えば、かつてのユニコーンは正直ここまで演奏力が優れたバンドではなかったし、ファンや周囲の期待に真正面から応えることをあえて避けるような節もあった。解散後、民生のステイタスが上がるとともにユニコーンというバンドもどんどん神格化されていってしまったような感がある。この再結成の盛り上がりもそういう背景があったのではないかと思う。リアルタイムで知らないファンは、言葉だけで知っていた「すごいバンド」という印象をこのステージで実際に「やっぱりすごかったんだ」と確実にしたと思う。周囲で勝手に盛り上がりヒートアップして行ったユニコーンというバンドの幻影に、本物のユニコーンというバンドが追いついたのだ。ライジングサンだけでなく、各地の夏フェスを行脚しているユニコーンだが、どこでも同じような光景が繰り広げられているのだと思う。この夏フェス興行で今回の再結成はひとつの区切りとなるらしい。十分である。新作、ツアー、フェス、どれも素晴らしかった。いいものを見せてもらった。

UNICORN
1.ひまわり
2.服部
3.ペケペケ
4.オッサンマーチ
5.BLACKTIGER
6.R&R IS NO DEAD
7.自転車泥棒
8.すばらしい日々
9.働く男
10.WAO!
11.ヒゲとボイン
12.大迷惑
13.HELLO