無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ロックンロールの殉教者。

MONDO ROCCIA(初回生産限定盤)(DVD付)

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 クロマニヨンズの今回もきっちり1年ぶりの4作目は、全編モノラル・レコーディングという試みを行っている。紙ジャケットの紙質や装丁にもこだわり、収録時間も12曲で34分と彼らのアルバムの中でも最も短い。つまりこれは、50〜60年代のロックンロールに対するクロマニヨンズからのリスペクトそのものであり、それ自体がコンセプトになっているアルバムだとも言える。本作は全12曲と、ハイロウズ以降これまで14曲が基本線だった彼らのアルバムよりも少ない。これは、昔のアルバムの収録時間もイメージした上での結果だったのだろうと思う。
 形から入ってるんじゃないかと言えばそれまでで、全くその通りなのだけど、ロックンロールには大事なことだと思うのだ。そして全力で形をなぞることでロックンロールの真髄に触れるんだぜ、というのがヒロトマーシーが本作で言わんとしていることなんじゃないか、とすら思う。前作では若干パターンが広がったかに思えたメロディーと歌詞も、本作ではまた一層削ぎ落とされている。「恋に落ちたら」に至っては「あのね」の3文字だけしか歌詞がない。でも、それだけで恋に落ちた瞬間の中二男子の心情をきっちりと描いてしまうところがすごい。ロックンロールに必要なものだけを選び取り、そのほかは切り捨てる。ハタから見たらムダにしか思えないようなことも、ロックンロールに必要なことは、やる。ヒロトマーシーの取捨選択基準と行動原理は単純だ。そして単純だからこそ、深い。
 ヒロトマーシーの曲はやっぱりそれぞれに個性があって、聞けば大体どちらの曲かわかるものなのだけど、個人的に本作ではクレジットを見るまでどちらの曲か分からない、あるいは予想が外れたものが多かった。そのくらいヒロトマーシーのイメージが近かったということなんだろう。二人で一つ、ではなく、二人で同じものが二つなのだ。今さらながらすごいコンビだと思う。