無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

よりクリアな自分を求めて。

#2

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 元THE MAD CAPSULE MARKETS上田剛士のソロユニット、AA=の約1年ぶり2作目。ソロユニットなので当然といえば当然だが、前作に比べても上田剛士個人の思想と音楽的志向が確実に作品に落とし込まれているアルバムになっている。メンバーは前作と同じで昨年からライヴも行っているのと変わらず、BACK DROP BOMB白川貴善(vo)、元マッドの初期メンバーだった児島実(g)、RIZE金子ノブアキ(dr)という顔ぶれ。AA=としては当面、このメンバーで固定ということなのだろう。レコーディングは上田によるデモを各メンバーが個別にレコーディングし、それを最終的に上田がまとめるという形をとったそうで、4人が揃って演奏したことは無かったらしい。一時期のマーズ・ヴォルタのような特殊な形式でのレコーディングだが、その分上田個人の色がより濃く出たということもあると思う。
 サウンドは後期マッドに近いデジタル・ハードコアだが、今作はよりインダストリアル色が強く、また4つ打ちが多いこともあってダンスオリエンテッドな曲も多い。上田らしいメランコリックなメロディーも随所に見られ、個人的には「meVIR」「4 leaf clover」あたりはかなりツボ。
 アルバムは全体を統一するテーマというかストーリーに沿って展開していく。BPMasterという支配者に統治された近未来という設定(だと思われる)の、ディストピア的物語がそれ。MUSEの『ザ・レジスタンス』にも通じる世界観とテーマで、現代社会における違和感と体制に対するアンチな姿勢が描かれている。一種コンセプトアルバム的な作りのアルバムになっている。ナイーヴな社会への拒否反応のみで書かれるとこちらはあまりのめり込めないのだけど、前作ほどこうしたメッセージに青臭い印象は無い。AA=としての活動が軌道に乗り、このユニットで上田剛士がやろうとしていることがより明確になってきたからだと思う。メッセージとして意味を持ちつつ、サウンドはその肉体性を失っていない。いいバランスのアルバムだと思う。