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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

それでも、サンボマスターは愛を歌う。

サンボマスター 「ロックンロールイズノットデッドツアー」
■2012/11/09@札幌ペニーレーン24
 地元・福島が大きな被害を受けた大震災と原発被害。いまだ解決していないこれらの出来事を前に、サンボマスターはどのような新曲を世に放つのか。春のツアーで聞けた新曲を含む本作は、この問いに単純明快な回答を与えてくれた。それはつまり「それでも、サンボマスターは愛を歌う」ということだ。
 「あなたのことしか考えられない」など、震災を想起させる曲はある。しかし、それもストレートなメッセージや怒りをもって叩きつけるのではなく、失われたあの子の命に向けて、あくまでもラブソングとして昇華させるのだ。僕はこのアルバム、というかここに収められた数々のラブソングを前にして戦慄すら覚えた。あんなことがあったのに、怒りも哀しみも絶望もあるだろうに、それでも彼らは愛を歌う。生半可な覚悟で彼らは愛を歌っているのではない。彼らが一貫して歌ってきたラブ&ピースが絵空事でもキレイごとでもなく、心の底からの叫びでありファイティングポーズなのだということが証明されていると思ったのだ。
 この日のライヴもまさにそういうものだった。とにかく想いを伝えたい、という衝動が異形のグルーヴとなって縦横無尽にフロアをかきまわすようなライヴだった。新作からの「衝動バケモノ」や「恋する季節」など、アップテンポでアグレッシブなナンバーで一気にアクセル全開。序盤から熱気で汗だくになるような速攻だった。中盤、「青春のかけら」「あなたのことしか考えられない」はアコースティックでしっとりと聞かせる。いろいろな思いが交錯する非常にヘヴィーなパートではあるのだが、シンプルに心を揺さぶられる感動的な時間でもある。「ふくしま」の時には前回のツアーと同様のMC。「オレは自分の故郷のことを歌う。キミ達は自分の故郷の事を思ってくれ。」そう、共感というのは彼らの歌うことをそのまま受け取ることではない。自分の人生、自分の環境に照らして自分のこととして解決することが重要なのだ。と、山口隆は言っているのだと思う。
 ここから、後半に向けてもう一度ギアを入れ直す。「静かに光り続けるもの」はインストでリアレンジしたバージョンもやっていた。新作中でも一際彼らのソウル色が濃く出た曲だが、サンボマスターのこういうタイプの曲(「週末ソウル」とか)が僕はべらぼうに好きだ。本編終盤はクライマックスが延々と続くようなテンション。僕は、ロックというのは不用意に風呂敷を広げすぎると本質がぼやけてしまうと思っている。基本的には半径5mのことを歌えばいいのだと思う。サンボマスターは世の中を変えるなら、まずは隣の人を愛せよと歌う。それはものすごく正しいことなんじゃないかと、僕は思う。

■SET LIST
1.衝動バケモノ
2.恋する季節
3.青春狂騒曲
4.世界を変えさせておくれよ
5.スウィート・ソウル・ドラマー
6.泣いてばかりじゃ見つからないぜ
7.君を守って君を愛して
8.あなたに心奪われたから
9.美しき人間の日々
10.青春のかけら
11.あなたのことしか考えられない
12.I love you I need you I want you ふくしま
13.ビューティフル
14.静かに光り続けるもの(インスト)
15.静かに光り続けるもの
16.光のロック
17.あの鐘を鳴らすのはあなた
18.そのぬくもりに用がある
19.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
20.できっこないをやらなくちゃ
21.ロックンロールイズノットデッド
<アンコール>
22.あなたと生きたい
23.歌声よおこれ