無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

Futurama

Futurama

 前作の時からそうだったけれども、もうこのバンドを単にギターポップなどとは絶対に呼べない。もっと幅広く、音楽そのものと言ってしまっていいだろう。メロディーも、声も、言葉も、ギターも、電子音も、アルバムに詰まっている音の粒子のなんときらめいていることか。音楽の密度は限りなく高くなり、反比例するように言葉は記号化し、断片的になっていく。音楽そのものが広げるイメージの前に、言葉は邪魔ですらある。そこまで純粋に音楽の力と可能性を追求したアルバムだと思う。真っ白い光の中を空に向かってエスカレーターで上がっていくような、そんな高揚感に包まれたアルバム。気持ちいい。特に冒頭から中盤、「ReSTARTER」あたりまでの流れはまさにそう。逆に終盤にたたみかけられるエモーショナルで、ややダウナーなメロディーは、明るすぎる光が照らした影のようなものじゃないだろうか。ラストの曲は「I'm Nothing」である。しかし、その影にしても虚無やネガティブというイメージからは程遠い場所にある。
 多分、というか絶対、彼らの中にも絶望はある。それを無視してるわけでも開き直ってるわけでもないのだ。それは前提なのだから。元からそんなことどうでもいいと思ってるんだろう。些細なことだと思ってるんだろう。もっと大事なことは他にもあると。その大事なことを彼らは(というかナカコーという人は)音楽で表現しようとしているのじゃないだろうか。そんな気がした。
 分かったふりして絶望を鳴らすやつらが100万光年かかったってたどり着けない場所に彼らはいる。