無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ライヴバンドとしての真価。

BUMP OF CHICKEN TOUR “MY PEGASUS”
■2004/10/04@Zepp Sapporo
 バンプ・オブ・チキンのライヴを見るのは実は2002年12月のツアー以来になる。ちょうど「スノースマイル」が出たときだ。昨年、今年とライジングサンに来ていたし見ようと思えば見ることができたのだけれども他のと被っていたり体力的に限界だったりで諦めていたのだった。ということでいろんな意味で楽しみにしていたのだが、一発目からビックリした。演奏が上手いのだ。や、まあ失礼な書き方なのは重々承知だが本当に僕の記憶にある彼らの演奏とは全く違うレベルのものだった。「天体観測」なんかはドラム走りまくりでいつ崩壊してもおかしくないような演奏しか聞いたことがなかったのだけど、全くそんな危うさはない。「オンリーロンリーグローリー」も「Sailing Day」も、「乗車権」も、ライヴという場で完璧に乗りこなしていた。正直ここまでバンドが上達してるとは思わなかった。とは言え彼らが世の中のバンドの中で一番上手いと言うことではなく、あくまで以前の彼らとは比べ物にならない進歩だということなのだけど、それにしてもだ。『ユグドラシル』というアルバムはこれまで以上に「音楽の在るべき姿」を彼らが意識して取り組んだ作品だったと思うのだが、その成果がこういう形で現われたのだとしたら素晴らしいと思う。
 単なる個々のテクニック向上に留まらず、それがバンドとしての一体感や音の説得力に帰ってきているところがいい。「くだらない唄」や「リトルブレイバー」など、初期の曲を聞くと特にそう感じる。「車輪の歌」などでは藤原がアコースティックギターを弾いていたが、これもほとんど不安なところはない。こういう曲をしっかり届けられるとライヴの広がりは大きく変わってくる。中盤のクライマックスは「Ever lasting lie」。間奏部分での凄まじいサウンドの応酬は本当にバンプなのかと見紛うほどの迫力だった。音のうねりが渦を巻いて会場を飲み込んでいくようなカタルシス。すごい。
 MCは少なく、淡々と曲を演奏している印象だったが、目の前の観客ともっともっと触れ合いたい、という圧倒的なまでの意思がこちらに伝わってきた。僕はアルバムの感想で「踏絵のようなアルバム」と書いたが、それと同時に、やはりバンプというバンドは根底にその温かさとやさしさを失わないバンドなのだということを再確認させてもらった。「同じドア〜」、「embrace」そして「fire sign」という本編最後の流れはありえないほどに感動的。アンコールは本編の流れとはやや変わって、本当に彼らの感謝の気持ちが伝わったような気がした。ラストの「ダンデライオン」まで演奏のテンションは全く落ちることはなく、堂々たるライヴバンドとしての力を示したと思う。
 技術をひけらかすことには何の意味もない。音楽を追求するのに技術は必要だけれども、それが最終的に音楽の中でどう用いられるかということだ。技術は目的ではなくてあくまでも手段である。本能でそれを理解し実践しているバンプのようなバンドは、それだけで信頼できるのだ。

■SET LIST
1.オンリーロンリーグローリー
2.天体観測
3.Sailing Day
4.車輪の唄
5.くだらない唄
6.Title of Mine
7.ギルド
8.リトルブレイバー
9.Ever lasting lie
10.乗車権
11.K
12.ダイアモンド
13.同じドアをくぐれたら
14.embrace
15.fire sign
<アンコール>
16.アルエ
17.ダンデライオン