異形と普遍の間で。
- アーティスト: THE BACK HORN,菅波栄純,松田晋二,山田将司
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2005/03/16
- メディア: CD
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異物感。僕がバックホーンを初めて聞いたときから、彼らの音楽に感じていたのは異物感だった。どうがんばっても飲み込めない魚の骨が喉に引っかかっているような感覚。一見普通の人間だがその奥にドロドロとした狂気を秘めているような、異形のオーラ。本作には「上海狂騒曲」にように、無表情のまま血みどろで金属バットを振り下ろすかのような曲もある。が、ギターの音はザラついた質感を持っていても、全体としてはなんというか優等生的なロックにおさまってしまっている感触だ。
どんな劇薬だって飲んでいるうちに体は慣れてくる。もっと強い薬でないと効かなくなってくる。最初はそういうことなのかとも思ったが、どうもそうではなさそうだ。本作での彼らは意図的に普遍的なテーマをわかりやすい言葉で書いているように思う。それにふさわしいサウンドを選択しているようにも。前作『イキルサイノウ』は過去最高の密度で鳴らされた傑作であったが、確かに、あのテンションを維持してさらにその上を行くのは不毛なようにも思える。
なんにせよ、このアルバムはまだバックホーンが新しい表現へ到達するための通過点なのではないかと思う。「キズナソング」や「奇跡」といった曲がその中で生まれてきたのだとすれば、この先にも期待が持てるというものではないだろうか。