転がる石には苔は生えない。
- アーティスト: The Rolling Stones
- 出版社/メーカー: Virgin
- 発売日: 2005/09/06
- メディア: CD
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しかし、この新作には驚くほどに瑞々しいストーンズのロックンロールがたっぷりと詰まっている。全16曲、当初は2枚組としてリリースするアイディアもあったほどだそうだ。いろんなところで『メインストリートのならず者』と比較されているみたいだけれど、それはボリュームというだけではなく、ルーズで黒い、R&Bやソウルを基調としたストーンズのグルーヴが復活しているからだと思う。僕がリアルタイムでストーンズを意識してきちんと聞くようになったのは1989年の『スティール・ホイールズ』からだったのだけど、少なくともそれ以降で最もレアなロックンロールバンドとしてのストーンズがこの新作では聞ける。「バック・オブ・マイ・ハンド」などスタンダードのカヴァーかと思うほど本格的なブルースだ。過去数作で鼻についたミック・ジャガーの最新トレンドを追いかけるような音作りがほとんど聞かれないのもいい方向に作用していると思う。結果、それがこの新作を2005年のコンテンポラリーな音として意味あるものにしている。来年にはこの新作を引っさげての世界ツアーの一環で来日するだろう。「ラフ・ジャスティス」や「レット・ミー・ダウン・スロウ」、「ルック・ホワット・ザ・キャット・ドラッグド・イン」が過去の名曲たちとともに演奏されるのだ。ステージで新曲を聞けるのがこんなに楽しみなストーンズというのも個人的には初めてだ。
ところで、今作を聞いて改めて感じたのだけど、このストーンズにしかありえない独特のタイム感というのを形作っているのはキース・リチャーズのギターではなく、むしろチャーリー・ワッツのドラムである。ジャストなようでいてズレているし、ズレているようであまりにもジャスト。こんなドラム彼にしか叩けないだろう。ミックやキースが「チャーリーがいなくなったらストーンズは終わり」というのも納得である。