正面突破。
- アーティスト: ACIDMAN,大木伸夫
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2007/02/07
- メディア: CD
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そしてこの5作目。ここに来て、その試行錯誤は大きく実を結び始めたと言っていいのではないか。全体のサウンドとしてはジャズやブルースなどを基調とした横ノリのミドルチューンが多く、パンキッシュで激しい曲に魅力を感じていた人にとってはややおとなしめの印象を受けるかもしれない。しかし、高度なアンサンブルは決して緊張感を失うことはないし、何よりも即効性のあるメロディーが復活しているのが魅力。前3部作の曲名を歌詞の中に忍ばせるなどの遊び心もあり、リラックスしたいい状況の中でアルバムが製作されたのだろうと思う。バンドの状態も恐らく非常に良いのではないだろうか。
思えば、彼らはバンド内の関係にしても、音楽的なハードルにしても、回り道をせずに常に正面から向き合ってそれを乗り越えてきたように思う。クールな佇まいとは裏腹に、不器用で体育会系の男気を持つバンドだと思う(個人的に、前作の感想でも書いたように、その世界観や音楽の構築については非常に理系的であるとは思うが)。そしてこのようにその成果をアルバムとして結実できたと言うのは、素晴らしいことだと思う。3ピースバンドとしてのACIDMANを考えた時に、これまでで最も音楽的に豊潤でその高いポテンシャルがフルに発揮されたアルバムじゃないだろうか。終曲の壮大なメッセージに説得力を持たせるだけの密度が全体に貫かれている。
彼らと同じようなサウンドを鳴らすバンドはいても、音楽の背景にあるコンセプトや思想において彼らと同じレベルでロックとして昇華できているバンドはほとんど思いつかない。という意味でも特異なバンドだと改めて思う。