無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

暗黒の生を祝福せよ。

THE BACK HORN

THE BACK HORN

 前作『太陽の中の生活』ではっきりと形を表しはじめた、「ポップであろうとする意思」が、より明確に具現化したアルバムと言えるだろう。バックホーンの新作は、サウンド的にも前作のようなどこにいくのか分からない荒れ球感はなく、かっちりとしたバンドアンサンブルを中心にしたブレのないプロダクションになっている。完成度で言えば『イキルサイノウ』以来の高い水準だと思う、個人的には。
 前作で「生きること」、生活そのものをテーマにし始めた彼らは、本作でもっと深く、「生」というものを描いていると思う。当然、その裏には「死」があるわけで。以前はいつ死んでもかまわないくらいの勢いで暴走していた彼らが、しっかりと闇を見据えた上で、どんなに罪深い生を送っていたとしても生そのものは美しく祝福されるべきものであるというところに行き着いている。デビュー時からずっと聞いてきた人間としては、ここに至る道程はかなり感動的である。菅波だけではなく各メンバーそれぞれが歌詞を書いているが、内容的にどの曲も一貫した幹があるところを見ると、メンバー間で共有している世界観・ビジョンというものが高いレベルで統一されているのだと思う。これまでになくバンドアンサンブルが安定しているのはそんなところも関係しているのかもしれない。しかし、根っこは非常にどす黒い暗黒の沼のような感情から音楽と言葉を紡いでいるバンドだと思うのだが、こういう境地に至ってしまうというのは本当に興味深い。以下、ライヴツアー感想へと続く。