無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

FAというものの意義を考えると注目すべきはカープの黒田の動向かもしれません。黒田は1996年に逆指名でカープに入団していますが、逆指名制度が導入された1993年のドラフト以降、逆指名(自由獲得枠、希望枠を含め)で入団した選手がFAで国内他球団へ移籍した例はこれまで皆無だからです。
 逆指名制度は、ドラフトの有形無実化を推進する悪しき制度であるというのは前提ですが、それはそれとして、そもそもFAと逆指名(現在は希望入団枠)が並列している日本のプロ野球がおかしいのですよね。建前上「自分が行きたい球団に行ける」という制度を使ってプロに入ったにもかかわらず、FAという権利を使って「行きたいところに行く」というのはどうなのかと。お前が行きたいところは最初に逆指名で入ったところちゃうんかいと。感情的に見てもそうなりますし。

 これは僕が昨年カープの黒田がFA件を取得した際に書いた文章の抜粋。結局、昨年は黒田はFA権を行使せず残留しましたが、今年はこの文章で黒田を「福留」に置き換えればいいと思います。シーズンオフ、福留が年俸交渉でゴネるのはもはや恒例行事のような感もありますが、今回はFAなのでゴネるくらいなら他を選ぶということになるでしょう。しかし、福留は1998年に逆指名でドラゴンズに入団した選手。しかも、彼の場合は高校のときに近鉄バファローズの指名を蹴って社会人に進んだ経緯もあります。そこまでしてドラゴンズに入ったくせに、「行きたいところに行ける」権利を使って出て行くのかと。感情的には非常に納得がいかない。しかしドラゴンズファンとしては、福留が後半戦いなくなっても日本一になったわけだし、出て行きたいなら出て行けば?というのが正直なところ。堂上兄や平田を鍛え上げて将来のレギュラーにする方が将来を見据えれば良いと思います。
 もはや既に今年のドラフトからは希望入団枠もなくなっているとは言え、向こう何年かは同じ問題が出てくるでしょう。ドラフトのときに自由競争で無く意中の球団に入った人間がFA権を取得する、という矛盾が。矛盾と感じない人もいるのかもしれないけど、僕はダメです。魚の骨がのどに引っ掛かったように、もやもやとした苛立ちを感じます。国内球団は無視して「夢でした」とメジャーに行くならいいですけどね。理由が金であれ、表向きはまだその方がいい。