解放の音。
- アーティスト: トータス松本
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2009/07/15
- メディア: CD
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そのトータスのファースト・ソロ・アルバム。タイトルもジャケットも実にストレートである。隠し事や裏表、一切無し。これが今のミュージシャン・シンガーとしての自分の持てる全てだと言う、清々しく気持ちの良いアルバムになっている。メロディーはもちろんだが、アレンジやコード進行が非常に洗練されていて、思わずオシャレという形容詞が思い浮かぶほどだ。ウルフルズの一種ワンパターン的な泥臭さとは一線を画す、センスに溢れた歌謡R&Bとでも言える音である。こうした音を、トータスはずっと頭の中で鳴らしていたのだろうか。おそらくYesだと思う。しかし、それはウルフルズ的ではない、ウルフルズにはそぐわない、と自分で判断して外に出していなかったのだと思う。
ウルフルズは確かに、バンドキャラクターとしてもメンバーの技量的にもいろいろな制約があるバンドではあるとは思うが、このアルバムで聞くことのできるトータス松本の才能を抑圧してしまうものであったとするならば、ウルフルズのファンは非常に複雑な気持ちにならざるを得ないだろう。シンガーとしての破格の能力は誰しもが認めるところであったと思うが、彼のアーティストとしての可能性はもっと大きいものだったのだ。おそらくは、トータス自身が考えていたよりも。
ウルフルズの休止は残念ではあったが、それは同時にトータス松本という優れた一人のアーティストを本当の意味で解き放つことでもある。音楽ファンとしてはまずそれを何よりも喜ぶべきだと思う。