無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ジャケットは鳥人。

Them Crooked Vultures

Them Crooked Vultures

 デイヴ・グロールフー・ファイターズ)、ジョッシュ・オム(クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ)、そしてジョン・ポール・ジョーンズの3人によるスーパー・バンドのデビュー作。百戦錬磨のプレイヤー同士による白熱のロック・アンサンブルが全編に渡って堪能できる、非常に濃いいアルバム。デイヴとジョッシュは元々一緒にやっている友人同士だが、そこにJ・P・ジョーンズという大ベテランがどういうきっかけで入ったのか。それについては各インタビューなどでも語られているが、結局のところ、2007年12月に行われたレッド・ツェッペリン再結成ライヴがなければ、このプロジェクトは実現していなかったのではないかと思う。
 あの再結成ライヴにおいて、(おそらく解散以来初めてと言っていいほど)正面からツェッペリンという名のロック・モンスターに向き合ったジョーンズは、自らのプレイヤーとしての衝動を抑えられなくなったのだろう。ロバート・プラントが頑なに拒んだためにツェッペリンのワールドツアーも立ち消えとなり、彼の衝動をぶつける場が無くなってしまったところに、このバンドの話が来たのだと思う。技術は衰えていないにしても、決してロックの最前線にいたとは言えないジョーンズが、デイヴやジョッシュと火花を散らすやり取りを実現できたのは件の再結成でツェッペリン的なるもの、つまりはロック・バンドのいちプレイヤーとしての真髄に彼が再度触れたということなのだと思う。
 恐らくはきちんと形のあるメロディーが最初にあったわけではなく、延々とジャムっているうちに誰ともなく弾いたリフが曲を牽引していくような作り方をしていったのだろう。どの曲も印象的なリフと、それを支えるどころか崩して建て直すような強引なリズム隊の駆け引きが味わえる。ブルースを基調にしたジョッシュのボーカルも味があって渋い。玄人好みの音なのかもしれないけど、このカッコ良さは異常。