エレカシ完成形。
- アーティスト: エレファントカシマシ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル・シグマ
- 発売日: 2010/11/17
- メディア: CD
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曲のテーマの多くは「俺たちの明日」以降のエレカシに見られる、日常の些細な出来事や心の動きを丁寧に掬い取り、その中から生きていく意味や明日への希望を照らし出すというものである。「幸せよ、この指にとまれ」がラストから2曲目に置かれ、基本的にはここで大団円という構成になっている。前作までのエレカシならここでアルバムが終わっていたと思う。絵に書いたような美しいエンディング。しかし、今作はこの後に「朝」というSEの曲が挟まれる。スズメの鳴き声が聞こえるのどかな朝の風景が、次第に不穏なノイズに変わっていき、カオスの極致に至ったところでラストの「悪魔メフィスト」に突入する。宮本は「朝」のSEを、スズメが首絞められる音にしたかったそうだ。そして「悪魔メフィスト」は打ち込みのリズムと激しいギターリフをバックに宮本ががなりまくるという、『good morning』期を髣髴とさせるサウンドになっている。
「幸せよ〜」で終わっていればこのアルバムのタイトルは『天使のささやき』で良かったはずだ。このラストがあるから『悪魔のささやき』なのである。なぜ、この曲をラストにしなければならなかったのか。簡単に言えば、これがないと片手落ちだからだと思う。これだけじゃなく、「悪魔メフィスト」がないと宮本浩次ではないし、エレカシではないし、何よりも僕らの日常ではないからだと思う。違う見方をすれば、この曲が作れるところまで、蔦谷氏や周りのスタッフ、エンジニア、レコード会社などの関係が成熟したということなんじゃないかと思う。「ガストロンジャー」と「悲しみの果て」が演奏されるのがエレカシのライブであり、その両極を持つバンドがエレカシである。それが一枚のアルバムに自然な形に収まっている。エレカシがここに来てまたひとつ上のレベルに到達したことを示す重要な作品だと思う。