無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

トゥルー・カラーズ。

ボーン・ディス・ウェイ

ボーン・ディス・ウェイ

 レディー・ガガはキュートなポップ・アートだと思う。そしてクレバーなアーティストだ。彼女の奇抜な衣装が何かと戦うための武装だという風には僕は思わない。従って、比較する意味はないだろうが、ガガはマドンナというよりはシンディ・ローパーに近いアーティストだと思う。そうした彼女の本質がより明確になったセカンドアルバムだと思う。
 「ボーン・ディス・ウェイ」のメッセージとはつまり、「自らを解放せよ」ということだ。自分の内にある可能性にフタをし、理不尽な周囲の仕打ちに怯えて暮らすしかない者に、勇気を与えようとしている。「YOU AND I」に込められたメッセージもまたそうだろう。この曲はかつて虐げられていた自分自身への鎮魂歌であり、現在、かつてのガガのように苦しんでいる若者たちへのエールでもある。
 僕が聞きこむほどにレディー・ガガを好きになるのはこうしたエモーショナルな部分であるのだけど、音自体が打ち込み多用で単にウェルメイドなダンスミュージックのように消費されてしまうのが少しもったいない。だからこそ、ガガというアイコンが世界共通言語として広まったというのも理解はできるのだが。アーティストとしての彼女の本質は別のところにあると思う。昨年、多くの日本のテレビ番組でガガを見た人はエキセントリックな外見に似合わぬピュアで素直な言動に驚いたのではないか。そういうことなんだと思う。