無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

スピにしては駄作。

 フィリップ・K・ディックの小説が原作ということだけど、SFファンというわけではない僕は読んだことがない。ので、映画単体の感想しか書けないのだけど、わりとよかったと思う。少なくとも『A.I.id:magro20010702#p1)』よりは敷居が低いのではないかと思う。物語の舞台は未来。そこでは、プリコグと呼ばれる予知能力者3人によって、未来に起こる殺人を事前に抑止することで犯罪をゼロとした世界。トム・クルーズ演じる刑事ジョン・アンダートンはプリコグの予知する殺人事件の犯人が自分であることに驚く。そしてその相手が全く知らぬ赤の他人であることに。こうして、物語はアンダートンと、彼を逮捕しようとする犯罪予防局との追いかけっこと、自分が犯人であるはずはない、何かの間違いだ、プリコグの予知に絶対はないのではないか?という謎解きの二つを軸に話が進む。この謎解きの部分がイマイチしっくり来なくて、正直、映画を見終わった後での素直な感想は「なんかこれ、すげえずさんなシステムじゃない?こんなので予知されて逮捕されたらたまったもんじゃないよなあ」というものだった。原作ではどうなってるのかわからないけども、あの、コリン・ファレル演じる司法省の役人が殺されるのは予知できなかったの?めっちゃあっさり撃たれてたじゃない?とか、いろいろ納得できない部分はあった。最後のドンデン返しもさほど驚くようなものではない。これは、演出というよりは脚本の問題だと思うけど。
 突拍子もないものではなく、あくまで現在我々の身の回りにあるものが進化した形での未来の世界の描き方は『A.I.』と近い。画面に説得力があるし、その辺はさすがにスピルバーグかなとは思うけど、とってつけたようなユーモアはいらないんじゃないかという気もする。それがスピルバーグだろうといわれればそれまでなんだけども、もっといい脚本で、ハードコアなSF作品を見てみたいという気もする。余計なことしなくてもエンターテインメントになると思う。