80年代
ニューウェーブの香り、たとえば
フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドとか、(音楽性は全く違うけど)
デッド・オア・アライブとか、そういうバンドが持っていた猥雑さやいかがわしさに近いものを
フランツ・フェルディナンドには感じる。ボーカルも非常にセクシーだし。しかし、その割にはこのアルバムはロックンロールとしてあまりにも正しい。どこか安っぽいダンスビートと、そこに乗る哀愁漂うメロディー。ため息のマイナーコードとでも言うべきこのメロディーの切れが彼らの音楽のキモであると思う。
フランツ・フェルディナンドの音楽は現実から逃避するための
享楽的なダンスミュージックではない。全てを忘れて楽しむには、このメロディーは悲しすぎるし、ビートは甘すぎる。ここではないどこかではなく、自分が立っているここから見える景色を少しでも変えるためのダンスビート。そんな切羽詰ったものを僕はこのアルバムから感じる。だからこそこの音楽はポップだし、広く受け入れられているのだとも思う。
しかし、メンバーのルックスもジャケットのデザインもスタイリッシュでクールなのでやっぱハイプかも、という気がしなくもないが、それでもだまされていいやと思っている。それは
ストロークスのデビューアルバムに出会ったときと同じ感覚だ。