ビートとロマンの間で。
- アーティスト: The Chemical Brothers
- 出版社/メーカー: Astralwerks
- 発売日: 2001/11/27
- メディア: CD
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ケミカル・ブラザーズは、その点非常に優れたバランス感覚でダンスとロックの間を自由に行き来しているユニットだ。ロック的なロマンを求める時には外部からのボーカルを借り、ベス・オートンというディーバの歌声はビートの強靭さと対をなし、彼らの音楽にアーティスティックな奥行きを与える。実に自然にロックリスナーを取り込んだのも当然の結果だったと思う。実際、前作『サレンダー』などは凡百のロックバンドなどよりもはるかに深い内省的、哲学的なアルバムだったし。(しかし、その分確かに踊りにくくはなっていたとも思うけれども)
今作も、"It Began In Afrika"のトライバルなビートと、"Star Guitar"の持つ浮遊感(宮崎駿のアニメの空を飛ぶシーンのようだ)、"The State We're In"はもうダンスとか言う以前に単純にいい曲だし、全編これ見事なバランスで一枚聞かせてしまう。最初から最後まで全て一曲で繋がっているような錯覚に落ちることもあるし、逆にどこから聞いてもどこで止めてもいい。まるで山手線のようなアルバムだ。"The Test"において、リチャード・アシュクロフトのVERVE時代(特に2枚目までの頃)を彷彿とさせるレアなヤバさを秘めたボーカルが復活しているのも彼らのバランス感覚と柔軟性のなせる技だろう。当然、ハイライトはこのラストナンバー。
フロアと自分の部屋の垣根を無くしてしまった功績は、ロックにとってもダンス/テクノにとっても大きなものだったと改めて思う。