過酷な運命に血沸き肉踊れ。
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 発売日: 2005/09/28
- メディア: DVD
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基本的にはこの3人のドラマが軸になるわけだけど、既にこれは実に正しい青春ドラマの様相である。前作同様サム・ライミはこの青春ドラマとパーカーの心理描写に執拗に時間をかける。ヒーローであるために自分のやりたいことを抑えて生きることに疲れ、スパイダーマンを辞めてしまうパーカー。そして、紆余曲折の末やはり自分はスパイダーマンとして生きるしかないんだ、という決意を新たにするのだが、その過程で様々な伏線が実に効果的に用いられていて唸ってしまう。今回の悪役はハリーの援助を受けて核融合の研究しているオットー・オクタヴィウス博士。実験に失敗し、人口知能を持った4本のアームと合体し、知能を乗っ取られ怪人ドック・オクとなってしまう。前作のグリーン・ゴブリンもそうだし、今回のドック・オクもそうだし、そもそもパーカーもだが、この映画に出てくるキャラクターは自分の意思で人間を超越してしまったわけではない。あまりにも過酷な運命に翻弄されている。悪役は単純に完全懲悪のイディオムの中で退治されるのではないし、スパイダーマンのダメ男くんぶりは前作でも今作でもこれでもかというくらいに描かれている。そういった切なさが『スパイダーマン』の肝であり、「親愛なる隣人」として愛される理由なのだと思う。
そして今作ではパーカーがスパイダーマンのマスクを取り素顔で活躍するシーンが多いのだけど、これも実に効果的に彼らの過酷な運命をさらに推し進めるツールとして機能している。逆に、この運命の中で苦悩するパーカーの姿を見せるためにマスクは邪魔だったのかも知れないと思うくらいだ。ラストでの次作(間違いなくあります)への伏線の強烈さと、そこで描かれるだろう過酷なドラマに更にワクワクし、沸点に達した所で本編は終わるのである。前作の時も思ったけど、なんて上手いんだ。一つだけヒントをいうと、前作の感想で僕は「あまりにも巧妙に続編の存在と次の敵役を暗示するラストシーン」と書いたのだけど、その続編というのはこの『2』ではなくて来るべき『3』であるのである。最初から3部作として構成されていたのか!やられた!という感じ。3年後が今から待ちきれないほどに、このシリーズでのライミの演出は完璧といっていい。SFXやアクションももちろん見どころ満載だけれども、このシリーズはやはり僕はドラマと、その演出の妙を楽しむべきだと思います。