無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ベテランの境地。

Perfume 3rd Tour 「JPN」
■2012/01/14@神戸ワールド記念ホール
 アルバム『JPN』が実に2年と4ヶ月ぶりの作品だったこともあり、当然のごとくツアー自体も非常に久しぶりとなるPerfume。東京ドームライブも含め単発のフェス・イベント出演は多かったものの、やはりツアーとなると格別の思いがあるようだ。この日の神戸はその初日。観客もPerfumeの3人もツアーでの再会を待ち切れなかったと言わんばかりの盛り上がりが最初から最後まで続いていた。
 実は個人的に生Perfumeは初めてと言う状態だったので、とにかく3人が踊っているのを見ているだけで幸せな気持ちだった。「The Opening」から始まる、アルバムと同じ流れで3人が登場し、「レーザービーム」が始まった瞬間に一気に世界の色が変わる。結構序盤、「エレクトロ・ワールド」でちょっと涙腺が緩んだのはナイショ。この曲のサビは破壊力が高すぎる。そしてMCが始まると途端にゆるい空気に変わる。このギャップが彼女らのライブの一つの魅力なのは間違いないと思う。アリーナ中央に設置されたサブステージまで、花道を歩きながらお客さんと会話したりいじったり。常連の方々とは普通に挨拶もしたりする。数万人を前にしてライブをやるメガアーティストでありながら、この身近な感覚はやはり稀有だと思う。ツアースポンサーである氷結への気配りも忘れないあたりもさすが。そしてスタンドとアリーナを3つに分けての「こ」「う」「べ」コール。この力技な盛上げ方も叩き上げのライブ経験で培ったものなのだろう。観客もそれに全力で応える。そういう「約束」がきちんと共有されている。僕のようなライブ新参者が置いてけぼりになることなく一体感が生まれるというのは、彼女らのパフォーマンスの正しさと、客とのいい関係を証明してるんじゃないだろうか。
 中盤は『JPN』からの曲が続く。Perfumeの魅力の一つはもちろん、そのダンスにあると思うわけだが、「スパイス」の振りを見ていて思ったことがある。「スパイス」は歌のフレーズがエコー的にずれて展開していく部分があるが、そこでは踊りも歌と同様にずれていくのである。単純に時間的にずれるだけではなく、それと同時に3人の立ち位置も変化していくのだけど、きちんとそれぞれの腕や体がぶつかったりしないよう、立体的に計算された動きの中で処理されているのだ。こういうことに気づけただけでも生で見に行った甲斐があるというもの。衣装替えのブレイク間は中田ヤスタカによる音楽と映像のコラボで楽しませる。そして、ステージセットがゆっくりと動き出し、せりあがった階段から3人が再び登場。クールに決めたエナメル系のドレスに身を包み、「グリッター」で後半戦がスタート。レーザー光線もバリバリに使用され、アリーナが巨大なディスコと化す。続いては今回のライブの聞きどころの一つ、長尺なメドレー。次々と繰り出される曲と、当然それに従い変わっていくダンス。BPMもバラバラな曲たちを違和感なく繋ぐサウンドアレンジとダンスは見応え、聴き応え十分。彼女たち自身もこのメドレーには今回かなり力を入れていたようで、終わった後息を切らしつつも満足気な表情を見せていた。
 後半はヒット曲を中心にクライマックスを演出する。伝家の宝刀「ポリリズム」の置き所も絶妙だ。コールアンドレスポンスもきれいに決まり、会場全体の温度も上がる。「チョコレイト・ディスコ」であがる掛け声と拳は壮観の一言。本編最後は『JPN』に収録された新曲の中でも珠玉の出来といえる「MY COLOR」。あ〜ちゃんが「みんな手のひらを上にあげてー!」と言って手が上がった瞬間、「手のひらが世界中〜」と曲が始まる。シンプルな演出だけど、この瞬間に泣けてきてしまったのは仕方がない。この曲の前のMCでライブ中唯一、震災に事について触れた。新作のタイトルも含め、自分たちができることに彼女たちなりに向き合った結果、笑顔と勇気を届けることが自分たちの使命だと考えたのだろう。「MY COLOR」もそうだし、アンコールの2曲もまさにそういう意識の元の選曲だったと思う。楽しかったし、伝わったし、個人的には何より、キャリア的にはベテランという年月を重ねてきたPerfumeのライブ経験値を生で実感できたことがよかった。ツアー後半、札幌でもう一度体験してきます。

■SET LIST
1.The Opening
2.レーザービーム
3.VOICE
4.エレクトロ・ワールド
5.ワンルーム・ディスコ
6.Have a Stroll
7.時の針
8.微かなカオリ
9.スパイス
10.GLITTER
11.メドレー:シークレットシークレット〜不自然なガールBaby Cruising Love〜575〜love the world〜シークレットシークレット
12.ポリリズム
13.FAKE IT
14.ねぇ
15.ジェニーはご機嫌ななめ
16.チョコレイト・ディスコ
17.MY COLOR
<アンコール>
18.DREAM FIGHTER
19.心のスポーツ