無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

病院でxxするということ。

 最近知り合いが入院してしまい、お見舞いに行ったりしたのだが、私も実は入院していたことがあった。小学生の時で、しかも足を折っただけというかわいいもんだが、当時の私には大事件だった。その頃のことを思い出したのでちょっと書いてみる。
 とにかくヒマなのだ、入院生活というのは。内科で具合が悪ければまだあきらめもつこうが、私の場合は外科だった。けがした部分以外はぴんぴんなのだから元気が有り余っている。しかも遊びたい盛りの小学生である。おとなしくしていろというほうが無理だ。同室の暴走族のあんちゃんと車椅子競争で病院内を駆け回ったり同じくらいの歳の子達と花札などして遊んでいた。その花札を看護婦さんにとられてしまい、うちのばあちゃんが詰所に怒鳴り込んだなんてこともあった。懐かしい思い出だ。私のけがは単なる骨折だったはずなのだが、病院がクソで手術する羽目になった。まさかという感じである。人生初めての大ショックであった。自分の体にメスが入るという事実に上手く対処することができなかった。そんな私が今自分の体をメスに入れる立場なのだから人生は分からない。手術自体は何てことないものだったが一応手術の前後は食事もとれず、点滴を打ったりしなくてはならなかった。それに加えて手術前に浣腸などというものをしなくてはならなかった。何しろ初めての経験である。というか後にも先にもあの時しかやったことはない。ウォシュレットで勢いがいいのはちょっと似てなくもないとは思うがややこしくなるので話を進める。で、初体験だったのだ。若い看護婦さんにケツを見せて浣腸されるなどということに対して何も感じなかったのはやはり若かったなあと思うがあの感覚はちょっとなんとも言葉では言い表せられない。「はぉほぅううぉあ」はなんかわりかし近い感じのような気がする。とまあそんな感じで予定よりも入院生活は長引いたわけだ。その間また族のあんちゃんと遊んだり、別の族のあんちゃんが非常階段で看護婦さんといちゃついてるのを目撃したりそりゃもう様々なことがあった。膝から下を切り落としてしまったおじいさんが「孫が切ったところに顔を描いて遊ぶんだ」といって笑っていたのをなぜかすごくよく覚えている。いろんな人がいて、いろんな出会いがあって、今思い返せば自分にとってはいい経験だったけど、きっとあの場所は辛いことの方が多くて、それでもみんな必死で生きてて、あそこにいた人たちはだからみんな魅力的だった。別の病棟に体が弱くてずっと入院しているという同じくらいの歳の女の子がいたのだけど、あの子は今どうしてるのだろう。
 そんなことを考えた。もう17年も前の話だ。