無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

サンマグランプリ

 唐突だが、僕はサンマの蒲焼缶詰が大好物だったりする。これとご飯さえあればその日の食事はもう終わったといっていい。それほど好きだ。こんなに素晴らしいものを1個100円で売っているダイエー麻生店に僕は賞賛の拍手を惜しまない。しかし。売り場に行くとわかるが、一口にサンマの蒲焼といっても様々な水産加工食品業者があってそれぞれに趣向を凝らしたものが販売されている。いったい一番美味いのはどれなのだろうか、という疑問が僕の脳裏をかすめたとしても無理はない。論より証拠。善は急げ。暖簾に腕押し。実際に食べ比べてみるのがよろしかろう、というわけで買ってみた。残念ながら3種類しか売っていなかった。他にもあるのかどうかはわからないが、全体を論ずるサンプルとしてはいささか不安ではある。しかしとりあえずはこの3種の神器ではない3社の缶詰を食べてみるほかはない。飯は炊けた。準備は万端である。
 さて、その3種類はそれぞれマルハ、ニッスイ、あけぼの食品である。どれもその缶詰の風体は独特の直方体型をしており、見る者の食欲を刺激して止まない。缶切りは不要だ。早速まずはマルハから行ってみよう。蒲焼独特のあの甘い香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。タレはやや煮こごり状態に近いのが特徴だ。サンマはなかなかに身が厚く、食べ応えも十分。しかしややタレが甘すぎるきらいがあるのが気になる。でも美味い。ご飯がご飯がススム君。というわけで一気に1膳を平らげてしまった。さて次はニッスイに行ってみよう。・・・・・う〜む。マルハのに比べるとタレがゆるい。汁に近い。そのせいか味が薄く感じる。身の厚さはいいが少しパサパサ感が。全体的にマルハより1歩落ちるか。さて、最後はあけぼの食品である。パッケージはあまりなじみがなく、もしかしたら初めてかもしれない。・・・・・・・・・・・う〜〜む・・・・・これもタレがゆるい。ニッスイ以上だ。味も薄い。飯をかっこむのが辛くなってきた。サンマの蒲焼の醍醐味は、身がなくなってもタレをご飯にかけることで軽く1膳はいけてしまう所にある。と科学的にも立証されているかどうかは知らないが僕はそう思う。残念ながらあけぼの食品ではその快感を得るに至らなかった。サンマの存在感が薄いのだ。そもそもサンマしか入ってないのだからこれはちょっと致命的だ。その存在感の薄さを横綱・曙と重ねてしまったとして誰が僕を責められよう。
 ・・・・ふう。食った。缶詰3缶。飯2合半。もう食えない。結果としては総合力でマルハに軍配である。確かに美味い、うん。次にニッスイ、あけぼのの順だろう。しかし。ここではたと気がついた。今僕は3つの缶詰を順に食べたが食べる毎に私の腹はふくれていき、脳に満腹信号が送り続けられていたのである。いくら美味いものでも腹いっぱいではうえっぷぷである。そう、今回の実験では必ずしも各社同一の条件ではなかったのだ。僕は愕然とした。だから日を改めて逆の順番で食べてみた。しかし、やはり結果は変わらなかった。マルハの優位は揺るがなかった。満腹になりかけた私の胃にもそのサンマの蒲焼は美味いと感じられた。あけぼのここに散る。マルハの圧勝である。まさに横綱相撲。これから先何があってもサンマの缶詰はマルハ以外買わないことにした。もう決めた。この決意は揺るがない。たとえ親の遺言であけぼのにしろといわれても涙を呑んでマルハを食べるだろう。きっと父や母もわかってくれることと思う。
 そんな僕が今最も気になっていることは鮭フレークは一体どれが一番美味いのかと言うことなのだがそれはまた別の話。