無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

Ready to Recieve

Ready to Recieve

 3年前に、ハリケーン#1というバンドのデビューアルバムが出た。当時僕は狂ったようにそれを聞いていた。そのバンドはライドというバンドにいたアンディ・ベルという人が中心になったバンドだった。ライドは確かにはたから見ててあまりいい解散の仕方ではなかった。きっと当人達にとっても苦しい出来事だったろう。しかしこのハリケーン#1のデビュー作にはあふれんばかりの希望が鳴り響いていた。「step into my world」の後半のギターソロなど、神への祈りのようだった。輝かしかった。一度でもどん底を経験した人間の歌う希望というのはそれだけで感動的で、どこまでもポジティブに人を突き動かすものだと思う。いつも僕はそう思う。その意味でもこのアルバムは本当に感動的で、それでいて肉体的なグルーヴも持ち合わせた傑作だった。
 さて。アニマルハウスのデビュー作。このバンドのギターサウンドには久々にグルーヴが溢れている。それだけで嬉しい。ライド解散以降、マーク・ガードナーが何を思ってこの音を作り上げてきたのかは分からない。でも、ここには見事なまでにセンチメンタリズムというものがない。ただこの新たなバンドサウンドを得た喜びと確信が鳴り渡るのみだ。そして、それが、それだけなのに、感動的なのだ。はっきり言えば、このバンドはマーク・ガードナーのバンドではない。サム・ウィリアムズという最高のパートナーがいてはじめて完成したアルバムだろう。だからこそ過剰な叙情性は薄れているのかもしれない。それはわからない。けどどうでもいいのだ、そんなことは。今この時代にここまでギターバンドの可能性を押し広げたグルーヴが鳴らされたことが嬉しくて、ガッツポーズを繰り返すだけなのだ。
 マーク・ガードナーはこのアルバムを引っさげてシーンに戻ってきた。アンディ・ベルはオアシスのベーシストとして世界中を回っている。二人が結局バンドというものを追い求めて自分の道を歩んでいるのを見ると、バンドというのは一体どんな魅力があるものなのだろうと思う。僕は経験したことがないから分からないのだけど。そういえば、最近もうひとつそんなことを思ったアルバムがあった。ハイロウズだった。なるほど。