無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

邪悪な熱。

Evil Heat

Evil Heat

 作品ごとにおかしいくらいサウンドのスタイルが変化するバンドだけれども、今回は比較的前作『エクスターミネーター』の延長線上にあるといえる。不気味にうねるエレクトロなベースラインを歪みまくったささくれギターが切り裂いていく、最新型ガレージ・パンクと言った感じ。前作に続きケヴィン・シールズが全面参加しているし、元ジーザス&メリーチェーンのジム・リードがボーカルをとってたり、『スクリーマデリカ』以来、再びアンディ・ウェザオールと組んだり、さながら自らの歴史を、つまりはこの10年のイギリスの裏音楽史を一気に駆け抜けるかのような布陣なわけだけど、安易な総括モードなどというものでは全くない。
 「キル・オール・ヒッピーズ」、「シュート・スピード・キル・ライト」、「イフ・ゼイ・ムーヴ・キル・ゼム」ほど直接的ではなく、もっと殺伐とした世界が広がっている。そう、グラウンド・ゼロのような。あの事件を前に無力感を感じるのとは違い、「だから言わんこっちゃねえ」的な不敵さを感じる。やはりこれもまた9.11以降のアルバムなのだと思う。淡々と死と破滅に向って歩んでいくようなサイケデリアに眩暈がしそうだ。40をとっくに過ぎているのにこんなアルバムを作れてしまうボビー・ギレスピーはやっぱりなにかやってるとしか思えない。