無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

リップ。それぞれの個と公。

Time To Go

Time To Go

 前作のように各人がソロワークを持ち寄るという形ではなく、基本的には5人集まった形の楽曲が多くを占めることになってはいるのだけど、その「5人5様のバラバラさ加減」と「5人集まったときの一体感」が前作よりはるかに極まっている。つまり、両極端な方にどんどんレンジが広がり、結果的に今まで以上にリップという名のユニットの可能性が広がっている。そんなもの今までで十分わかっていたことじゃないか、と言われそうだけど、それがまた違うレベルで示されてしまっているのだ。本当に底が知れない。
 フミヤという人の才能は本当にすごい。多分この人、クラシック書けって言ったら書けちゃうような、根本的に音楽家なんだと思う。それぐらい有り得ない音が鳴っている。そしてPESって人の孤独と闇は僕が思っている以上に深い。
 フミヤのトラックにしろ、各MCのリリックにしろ、この人たちがそれぞれやっていることは決して他のメンバーにはやさしくない。というかむしろ、「これに対してお前ら、どう返してくる?」くらいの挑発的な匂いすら漂う。それに対して、「これでどうだ!」っていう答を各メンバーが返している。究極的にインディビジュアルであるからこそ、究極に個々が切り離せないものになっているという、そんなリップならではのバンド・マジック溢れる傑作だと思う。ポップだとか楽しいとか切ないとかワクワクするなんてのは彼らにとっては前提だ。そうしようと思って四苦八苦している人は、これ以上いくらやっても追いつけやしない。