無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

世界を支配するドラム。

The end of the beauty

The end of the beauty

 中村達也率いるLOSALIOSの新作。スカパラ加藤、TOKIEさん、武田真治のおなじみのメンツに加え、浅井健一照井利幸、そして土屋昌巳ミック・カーンとのセッションも収められている。この参加メンバーから「ブランキー復活だ!」という簡単な盛り上がり方をしてしまう向きも多かろうが、それは中村達也に対してもこのアルバムに対しても失礼と言うものだ。少なくとも、このアルバムに収められている多種多様なキャラクターを持つ音楽は間違ってもブランキーではなく、中村達也の世界としか言いようのないものだからだ。
 本作に参加しているミュージシャンは、中村達也のドラムに触発され、様々な音楽的冒険を繰り返す。そしてその音楽を受けて、達也のドラムもまたその姿を生き物のように変えていく。収められている曲はどれもそうした相互作用の結晶だ。曲によってアレンジは様々だし、ジャズ、パンク、ロックンロール、ボサノヴァと、雑多なジャンルを飛び越えていく全10曲に統一性ははっきり言って無い。しかし、全体通して中村達也というアーティストの姿が透けて見えるのは、元々彼がそれだけの大きな器を持つドラマーであると言うことの証左であろう。
 優れたボーカリストが、どんなアレンジの中でも自分の世界を作れてしまうように、達也もまた、どんなアーティストと組もうが、自分のドラムで楽曲を支配できるのだ。達也氏本人にとっても、聞いた人間にとっても、音楽の可能性が一気に広がるようなアルバムだと思う。個人的には久々に土屋氏のギターが満喫できたのが嬉しい。なんてカッコいいんだちくしょう。