無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ファイナル終了。僕がもしかしてと言った通り4勝1敗でデトロイト・ピストンズが14年ぶりの王座につきました。前評判では一つか二つ勝てればと言われていたチームが予想を覆す大どんでん返し。しかし、ファイナルの戦いぶりを見れば勝って当たり前と言う強さでした。

レイカーズの敗因
(1)ポイントガードのマッチアップ;つまりはゲイリー・ペイトンの不調。不調と言うよりは、シーズン通してさいごまでトライアングルオフェンスにフィットできなかった。ソニックス時代は全て自分を基点に攻撃を組み立てていたのでとまどったのかも知れませんが。ピストンズのチャウンシー・ビラップスを全く抑えることができませんでした。
(2)コービーのセルフィッシュなプレイ;それはいつものことですが、とくにこのファイナルではチームが劣勢なので何とかしようという気持ちが空回ってしまったようです。それでも何とかできるのが現在リーグNO.1クラッチシューターである所以ですが、ピストンズのディフェンスがそれを許さなかった。マッチアップしていたのはティショーン・プリンスですが、彼は素晴らしいですね。
(3)ベンチメンバーの不調;不調というか、ほとんど役にたっていなかったような気が。ブルズ時代から、フィル・ジャクソンのトライアングルオフェンスは誰が出てもシステムが機能していればチーム力が上下しないと言うのが強さだったわけですが、フィッシャーにしろフォックスにしろシステムを理解しているはずの選手がオフェンスで貢献できなかったのは誤算でした。
(4)マローンのケガ;シーズンも半分棒にふることになったマローンの右膝がファイナルで再び悲鳴を上げました。特に優勝が決まった第5戦、マローンがユニフォームを着ていなかったのはあまりに痛かった。オフェンスでもディフェンスでもいいプレイをしていただけに。もしかしてレイカーズで今年リングを誰よりも欲していたのはマローンかもしれないのに。無念でしょう。
(5)精神的な弱さ;弱さというか、粘りのなさ。淡白さ。第2戦で劣勢を跳ね返し、コービーの3ポイントで延長に持ちこんだのが唯一執念を見せた所で、あとはピストンズの気迫に圧されっぱなしだったように思えます。

ピストンズの強さ
ディフェンスのすごさは言うに及ばず、レイカーズと逆に精神的なタフさがこのチームにはありました。その、リードしている状況から自分たちのミスで追いつかれ、延長負けを喫した第2戦。その次の試合が非常に重要だったわけですが、地元で見事に勝利。実はこの試合がこのシリーズの分水嶺だったといえると思います。チーム全体が自分たちを信じていること、選手一人一人が自分の役割を果たし、一丸となって勝利を求めていること。当たり前のことが実践できればスーパースターがいなくてもチャンピオンになれると言うことが証明されたわけですね。
あとは、2月にトレード期限ギリギリで獲得したラシード・ウォーレス。彼がいなくてはこの優勝は恐らくなかったでしょう。オフェンスでもディフェンスでもチームに欠けていたものをもたらしました。過去のチームではトラブルメーカーの烙印を押され、勝利と出場時間に飢えていた彼が見事にチームプレイヤーとして蘇りました。ラリー・ブラウン監督の手腕でしょう。このオフにFAになるはずですが、チームも彼もこのまま一緒にプレイすることを望んでいるのでは。


レイカーズがコービー、シャック、ペイトン、マローンという4人のスターを抱えているのに対し、ピストンズはふたりのウォーレスがオールスター経験があるという程度。リチャード・ハミルトンはオールスター候補ではありますが、ウィザーズ時代、マイケル・ジョーダンにプレイが自己中心的といわれて放出された選手。ファイナルMVPビラップスもデビューしたセルティックスではポール・ピアースを選んだチームの思惑で放出され、5チームをたらいまわしになるプロ生活を送ってきた選手。Rウォーレスは前述の通りブレイザーズで悪童の烙印を押され、ホークスでは勝ちに飢えていた選手。Bウォーレスに至ってはドラフト指名すらされていません(下部リーグからNBAに来た苦労人)。まさに雑草チームといえる彼等でも自分の役割を果たし、チームとしてまとまっていれば勝てるということです。このファイナルは『スラムダンク』読み終えたときのような感覚をよみがえらせてくれるものでした。今年スター不在のピストンズが勝ったということは、このオフ各チームのトレードやFA市場にも少なからず影響を及ぼすかもしれません。
そして、今年で契約が切れますが早くも再契約をしない旨の発言をしているフィル・ジャクソン。彼がいなくなればFAとなるコービーをはじめ、チームを離れる選手が続出するでしょう。5年前のブルズのように王朝崩壊となることは必至。レイカーズの明日はどっちだ。