無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

とてもお金のかかったホームドラマ。

デイ・アフター・トゥモロー [DVD]

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 「インディペンデンス・デイ」、「ゴジラ」のローランド・エメリッヒ監督が巨額の制作費と最新のCG、VFXを駆使して作った大作ディザスター(災害)映画。地球温暖化の影響で南極など極地の氷が溶け、大量の淡水が海水に流れ込むことで海流の動きが変化し、北半球の気候が一変し氷河期がやってくるというお話。実際はもっと複雑な話で、事実学術的にもこうした変化の一端は現在も報告されており、あながち映画の中のフィクションとして片付けてしまえるほど楽観的な話ではないらしい。製作者側にはその辺の意識もあって、単なるパニック映画というよりも遠くない未来に起こりえるかもしれない危機に対し、今どう対処するか?という啓蒙的な思想があるような作りには一応なっている。一応ね。
 前半は気候の変化とその原因が様々な角度から描かれ、来るべき大災害の兆候をこれでもかというくらいに煽る。見どころは巨大竜巻の群れがロサンゼルスを襲うシーン。たぶんこれだけで『ツイスター』一本分くらいのカロリーがある。その中に主要登場人物と彼らの状況が挿入されていくのだけど、北半球が氷で覆われるかもしれないってのに結局はデニス・クエイド演じる気象学者ジャック・ホールとその家族、息子サムの友人達程度の狭い世界だけの話しかしていない。そのせいでどうにも緊迫感が持続しない気がする。NYを大津波が多い、急激な気温の低下で一気に凍りついていく映像は、それなりに見ごたえはあるものの、後半のドラマ展開は正直言って退屈そのもの。ジャックがサムを救うために大した策もないままNYに乗り込んで行くわけだけど、その過程も結論もなんだか安っぽいホームドラマみたいなもので、地球の、人類の歴史上一大事がずいぶんと矮小な部分で一件落着させられてしまい肩透かし。「死を覚悟した絶望的な状況で人間はどうするか?」というのも本作の主要なテーマなのかもしれないが、甘ったるい家族愛(しかも1世帯)だけに焦点を当てられても全く感情移入できない。ジャックの論文に唯一理解を示し、結局避難できずに死を受け入れる海流学者と研究所の人間の最後のシーンも、どこかで見たようなセリフと演出でさしたる感動はない。
 ラストは結局なんだかよくわからないままとりあえず人類の未来には希望があるよ的にまとめられてしまったんだけど、いいのかいそれで。アメリカだけでも半分以上の人が死んじゃったはずなんだけどずいぶんあっさり流されてるなあと。あと、メキシコの人は怒らないかいああいう描かれ方で。なんとも、ラストに向かうにつれて無理矢理なご都合主義が満載で「えええええ?」って感じである意味で驚きの連続という映画でした。サムのガールフレンド役であるエミー・ロッサムがかわいかったのが救い。最新のVFXが見たいという人と、何でもいいから時間つぶしに一本見たいという方以外には僕からはおすすめできません。そういう意味では非常に正しいエメリッヒ監督の映画です。