岡村ちゃんをリアルタイムで聞ける幸せ。
- アーティスト: 岡村靖幸
- 出版社/メーカー: ユニバーサル シグマ
- 発売日: 2004/09/01
- メディア: CD
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (37件) を見る
9年。一口に9年といっても、その時間は驚くほどに長い。赤ん坊が小学生になり小学生が大学生になってしまうくらいの時間だ。その中で岡村ちゃんは答えを見つけ出せたのだろうか。多分見つけてないと思う。だけど、このアルバムの中にある言葉と登場人物は、かつて彼が描き出し、追い求めていた純粋さを微塵も失っていない。それは彼の音楽が今でも青春真っ只中の風景を持つ思春期的なものであることを意味する。だから彼の音楽は写真の中の笑顔のように時代とともに古くならないのだ。15年前に彼が作った曲が今でもティーンエイジャーだった頃の記憶を呼び戻すものであるように、このアルバムの曲は15年後も今ティーンエイジャーである人間の記憶に刻まれることだろう。
「ミラクルジャンプ」のアコースティックギターのカッティングを聞いた時に、僕は「本当に帰ってきたんだ」と思った。それくらいに瑞々しく、はちきれそうな「あの時代」の風景がそこに見えた。「ファミリーチャイム」のような切なく美しいバラードが放つ輝きも岡村ちゃんにしか出せないものだ。学校の外で初めて制服以外の格好のあの娘を見たときのようなワクワクドキドキする感覚。これだよ、これ!ファルセットが高音でかすれてしまうことだけがブランクを感じさせるのだけど、あまり大きな問題ではない。純粋なものが更に見えにくくなっている時代にそれを求め続ける岡村ちゃんは以前にも増して孤高であり、切なく儚い戦いに挑んでいるように見える。しかし、だからこそ、岡村ちゃんは岡村ちゃんなのであり、今だからこそ鳴らされる意味をもつ音楽になっていると思う。ただ単に新作が出たから良かったということではないのだ。それがどれだけ嬉しいことかわかるかい?