無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

われはロボット(・ロック)。

Human After All

Human After All

 前作『Discovery』から早4年。4年かあ。その頃はまだ北海道に帰って来てなくて東京の方でライヴ三昧の日々を送っていたのだった。あの頃は良かった。いや、良くなかった。というか良くも悪くもあった。まあ、個人的にはそれくらい久しぶりだということ。
 ほとんどの曲は単純なフレーズの繰り返しでできている。というかそれのみと言ってもいい。展開にしても急激なものはなく、単調と言われても仕方がないかもしれない。基本的に、ワン・アイディアなのだ。しかし、わずか40数分の中に10個のヒラメキが矢継ぎ早に現われるこのアルバムは、それがゆえにポップミュージックの機能性を絶妙に保っている。これ以上シンプルになると物足りないし、これ以上ゴテゴテと飾りつけても足腰が重くなる気がする。「何も足さない、何も引かない」そんな、純国産ウイスキーのような匠の領域に入っているのではないか。
 アナログな感触を残すジャケットワークと、生ギターをフィーチャーしたサウンドスケープ、そして邦題で「原点回帰」と冠されたアルバムタイトル。しかし単にレイドバックしたというものではなく、むしろ未来感をきちんと持っているところが非常に素敵だと思う。
 個人的に、クラブに踊りに行くような生活はもう卒業してしまっているし、この類の音楽を聞く時に僕が重要に思うのは家で1人で聞けるかどうかである。聞いていて楽しいのか、意味があるのかということ。この、シンプルでいて飽きそうで飽きないアルバムは、いい意味で日々の生活のBGMである。アルバム1枚聞き通す間、半身浴でゆっくり汗をかくとのぼせるでもなくちょうどいい具合なのだ。冗談ではなく、彼らのような音楽が「ポップ」だというのは、つまりはそういうことなんじゃないかと思う。